失敗しない採用に必須です。「経営計画」から「採用計画」「人材育成計画」への落し込み方

採用や教育について「経営計画」の重要性を説明しました。
簡単に言うと、「本来、採用は目先の投資ではなく、将来への投資」です。だとしたら、まず「自分たちが将来どんな事業をするのか?」を考え決める必要があるということです。
そして「自分たちが将来どんな事業をするのか?」を纏めたものが「経営計画」です。

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当然、「自分たちが将来どんな事業をするのか?」を考え決めた後は、「将来の事業遂行に必要な人材をどう揃えるか?」という思考が必要です。これが「採用計画」であり「人材育成計画」です。

「経営計画」と「採用計画」「人材育成計画」の関連は簡単。以下の2点です。

経営計画採用・人材育成計画
将来どのようなビジネスをしているか?その時どのような人が活躍や貢献をしているか?
将来に向かっての道のりはどのようなものか?将来のビジネスをやるに当たって、どのような人を採用し、その人にどのような教育をするのか?

しかし、実際にやろうと思うとハードルが高いのは事実ですから、ここでは「採用計画」「人材育成計画」の作るポイントを書こうと思います。

なお、本文では、、「採用計画」「人材育成計画」と分けずに、両方一緒に「採用・育成計画」と表現することにします。
言うまでもなく、採用と育成は一体ですので。

プロ野球のドラフト戦略に学ぶ

私が好きな、広島カープでは、「ポジション」と「年齢」の二軸でマトリックスを作って、今年のドラフト会議で指名を強化するポジションを割り出す。ということをやっていると言われています。

ここからは単なる想像ですが、プロ野球選手は成功した人でも、30歳~40歳で引退というのが普通ですから、あるポジションのレギュラークラスが「そろそろ30歳」という時が、次世代育成に入る時ということでしょう。

もちろん、プロ野球は、その才能では国内トップの人たちが、「とにかく入りたい」と熱望する、超人気業種ですから、ほぼ凡人たちを集めて、なんとか成果を出さなければならない企業、ビジネスの世界にそのまま当てはめるのは無理があります。

しかしその「考え」は使えると思います。

企業は継続、反復して、成果(利益)を出す。と定義すれば、「経営計画」で洗い出した「10年後のビジネスに必要な要素」から必要な人材像(カープのマトリックスで言えば「ポジション」)を抽出し、そこに充てる人材の属性(カープのマトリックスで言えば「年齢」ですが、企業ではそれにプラス能力も必要でしょう)との二軸のマトリックス作るというのは理に叶ったことです。

次からはその手順を説明します。

将来の事業に必要な人材を洗い出す

仕事の要素を分解してみる

まずは、「経営計画」で洗い出した「10年後のビジネスに必要な要素」をさらに細かくしましょう。言い換えると、前述のマトリックスで言うところの「ポジション」を細分化してみるということです。

カープのマトリックスの現物を見たことはないのですが、普通に考えれば、明示されているかどうかは置いておいて、マトリックスより一段細かいレベルで、ポジションごとの仕事の内容は定義され、採用を担当するスカウトや、育成を担当するコーチの間では共通認識になっているはずです。

例えばショートいうポジションであれば、「自分の周囲に来たゴロは確実にアウトにする」というのが基本的な仕事の一つです。その仕事をさらに細かくすると、「ゴロを的確に捌く」「1塁へは速い球で的確に送球する」となるとはずです。

このように、このポジションで必要な仕事は何? ということを段階的に考えて行きましょう。

多くの会社では、この作業をあまりやらないようですが、やってみると大事な気付きがあるはずです。それは、「どんな仕事でも、細分化してみると、その8割から9割はそんなに難しくないことの集まりである」ということです。
実は仕事の難しさとは、8割から9割の難しくないことをどう上手く組合せて行くか? つまりは段取りなんですよね。

必要な人材像を定義する

前項で分解した「仕事の要素」を人に当てはめてみましょう。

ここで言う人材像とは、仕事の遂行能力や、対人能力などですが、こう言われてもまぁ分からでしょうから、今いる主力の社員や中核社員をベースに考えることをお勧めします。というよりそれ以外の方法ではなかなか考えられないでしょう。

例えば、分解した仕事の要素から考えて「主力社員のAさんにプラスαで何を身に付けてもらえば、10年後のビジネスのこの部分を担う人材になる」とか、「中核社員のBさんのような能力を持った人があと2人いれば、10年後のビジネスのここの部分を任せられる」などの思考です。

なお、この作業をすると「もう手も足も出ない」となることがしばしばあります。要は「経営計画」で考えた「10年後のビジネス」が、現有人員から見てレベルが高すぎて、10年では届きそうもないという状態です。

このような場合、取るべき手段は二つです。「経営計画」を見直すか、あくまで「経営計画」に基づいて、会社のレベルを上げて行くか。です。

一般的には後者の方が大変ですが、そこは経営者としての考え次第です。ご自身で選択してください。

必要な人数を検討する

必要な人材の定義が完了したら、ではどのくらいの人数が必要か? という点も検討しましょう。
10年後には定年を迎える人もいるかもしれないし、そうでなくても退職する人もいることを念頭に入れて、それぞれのポジション別に人数を割当てましょう。

最初に紹介した、「ポジション」と「年齢」の二軸でマトリックスを作るという作業です。
それを作れば、以下が見えてくるはずです。

  1. 全く人材がいないポジション
  2. 今は人材がいるが、10年後には穴があくポジション
  3. 今は穴があいているが、10年後には適切な人が就くと思われるポジション
  4. 現在も将来も適切な人がいるポジション

①と②、「全く人材がいないポジション」「今は人材がいるが、10年後には穴があくポジション」は、採用しなければならないポジションです。

③「今は穴があいているが、10年後には適切な人が就くと思われるポジション」は、その人を上手く育成することと、退職に向かわないようフォローすることが重要です。

また、④「現在も将来も適切な人がいるポジション」は今やっている事業分野でしょう。
「経営計画」を立てる前提は、「10年後には今と違った事業やビジネスをせざるを得ない」ですから、今やっている事業は、その時までの飯の種であり、10年後には衰退していることが前提ですので、10年後にそのポジションは無くなっています。
したがって、今からポジションの転換を検討すべきです。③同様その人を上手く育成することと、退職に向かわないようフォローすることが重要です

優先順位を決める

採用するにしても、教育するにしても全ポジションを一斉に出来るわけではありませんから、それぞれ優先順位を決めて取組んで行かなければなりません。

「ポジション」と「年齢」のマトリックスを眺めてみれば、仕事の難易度や候補と目されている人の年齢などの要素から、「いつ」採用すべきか? 「いつから」教育を始めるべきか? が分かるでしょう。

これで、採用や教育の優先順位が決まります。

人材像、人数、優先順位から今からの採用と教育を検討する

ここまで検討した、人材像、人数、優先順位から、必要な人材をどのようにして揃えるか? という思考に向かいます。
一般的には、中途採用で行くか? 新卒で行くか? そして採用した人をどうやって育てるか? を検討することになります。
それぞれ見て行きましょう。

中途採用か? 新卒採用か?

経験のある人を即戦力として中途採用で採るべきか? 新卒を採用して育てて行くべきか? 悩むところです。
でも実は、前述の「仕事の要素を分解してみる」で書いた「要素レベルまで仕事を分解すると、難易度が高くないものがほとんどである」が正とするならば、経験の有無はあまり意味がありません。
また、日本に限って言えば、「経験=即戦力」という等式が成り立つことが少ないですから、中途でも新卒でもそれなりの教育をする必要があります。

結局、中途か新卒かは、自社が取組みやすいか? 採用し易いか? あるいは好きか嫌いか? というレベルで決めれば良いと考えています。
極端に言えば、10年後の自社の姿を想像するとき、その時に居て欲しい社員というのが第一条件になるでしょうから、採用するのは50歳代の人でも良い訳です。そして一般には20歳代より50歳代の方が採用はし易いはずです。
「若く優秀な人」がベストなのは当然ですが、そこは今の自社の力との関係で決まりますので、柔軟に考えるべきです。

どうやって教育するか?

結局は、新卒、中途、年齢に関わらず、それなりの教育が必要です。
しかし、学ばなければならない内容は、「要素レベルまで仕事を分解すると、難易度が高くないものがほとんどである」のです。

また、実際問題として、中小企業での教育は、「本人次第」という要素が大きくなるのは否めないでしょう。
実際の教育内容は会社によってまちまちですので、ここでは、以上の2つの前提をベースに、教育するに当たって、まずしなければならないことを考えて行きましょう。

自分が分かっていないと理解できる知識が必要

実は勉強を始めたばかりのときは、それに対する知識がないので、自分が分かっていないことを分からない。という状態です。
この状態で勉強を続けるのは、終わりが見えずかなり辛い。
逆に、「自分はまだまだ未熟だな」と思える程度に知識が身に付いていれば、多くの人は、未熟な部分を克服しようと努力するはずです。

したがって、会社組織としてやらねばならないのは、多少強制してでも「自分が分かっていないと理解できる知識」を教え込むことです。

これは私が失敗から学んだ教訓です。

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本人が自己成長努力をする環境を整える

「自分はまだまだ未熟だな」と思ったとしても、その学びが面白くない。意義が見いだせない。という状態だと勉強にも身が入らないです。
面白い/面白くない、意義を感じる/感じない というのは、多分の主観的なものです。
「会社が自分に合っている」と感じているとき、仕事そのものは面白くなさそうなものでも、面白いと感じるでしょう。
仕事の内容が社会的意義があると誰もが思う内容でも、会社内の人間関係が悪ければ、あまり意義を感じないものです。

結局は、その社員が会社を好きか嫌いかで決まると言っても良いでしょう。
自社のことを、社員が好きと思っていれば、教育も上手く行く可能性は高くなりますので、そのような環境を整えることは必須でしょう。

採用で見るべきポイントは自ずと分かる

以上を考えると、採用のとき見るべきポイントは、「自社の社風に合うか合わないか」が最重要です。加えて、スター社員としてごく少数の「要素レベルまで仕事を分解しても、難易度が高く」部分の能力がある人を見つけ出すことです。
そのための手法の一例をして以下を参照ください。

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採用の成否や教育の進捗を計画にフィードバックする

当然ながら、相手は人間ですから、予定通り進むことはありません。
その進捗は、必ずフィードバックして計画に見直しをしましょう。

結果2割行けば良い

思っていた人材が5割もいたら、事業の成功確率はかなり高くなるでしょう。
そこまで行かなくても、思ってた人材が2割いたら、理想とする形に2割も近付いたことになります。ビジネスに限らず、理想の状態なんてそうそう達成できるものではありません。一生懸命やってほどほどということばかりです。
2割というのは、少なくとも自分の意志で理想とする方向に進んでいる。という意味ですから、スローガンばかりで、道筋を示さず、結果どこに向かっているか分からない。という状態より遥かに良いのです。

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会社は商店じゃない。
組織を作り「会社」を作ること 採用はそのスタート地点

「求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。」こんなことの繰り返しで、ずっと]採用活動を続けている。そんなことありませんか?

「曖昧な定義で“戦力”になりそうな人を探す」より「“戦力”を定義し」、「組織を作り」、その上で「自社にマッチした考えの人を採用し」、「育て」、「戦力にする」と視点を変えてみましょう。

これすなわち経営。採用活動こそが最初に経営の力が試される場なのです。

>クソゲー採用を卒業しませんか?

クソゲー採用を卒業しませんか?

求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。こんなことの繰り返しで、ずっと採用活動を続けている中小企業が多いです。
私はこれを「採用活動のクソゲー化」と呼んでます。クソゲーとはルールや設定が酷すぎて、終わらない、つまらないゲームのこと。
今までの習慣やルールを変えて、まともな採用をしてみませんか?そう考える方はこちらまで。

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