中小企業の採用には何故地道な営業活動が必要か? その理由と具体的な方法とは?

  • 2021年4月22日
  • 2021年5月18日
  • 採用

商品や製品の営業を思い浮かべてください。
その商(製)品が、売れそうな顧客を見つけて、自社の商(製)品の良い所をPRしますよね?

採用もこれと全く同じです。

ざっくり言えば、自社の商(製)品の良い所を注目してもらうためにブランディングを行い、商(製)品を顧客に認知してもらい、購入してもらうことがマーケティング(なので、広義ではブランディングはマーケティングに内包されます)となります。

これを採用に置き換えると、ブランディングは自社の良い点に注目してもらうこと、マーケティングは、自社のことを認知してもらう活動です。どちらも対象は、就職しようとしている人と、その人を支援している人です。

ドラッカーも「マーケティングは営業を不要にする」と書いている通り、マーケティングが上手くできれば営業行為は不要になります。これは採用活動もほぼ同じです。

実際に、私がIT企業で採用を担当していたとき、ブランディングとマーケティングの考え方を取り入れてきたので、採用に苦労したことはありません。まぁ楽勝でした。

関連記事

私がIT企業に勤めている時、自社の採用(新卒採用のみですが)を主導する立場にありました。 皆さんもご存知と思いますが、従業員100名~200名の中小IT企業なんて、掃いて捨てる程世の中には存在し、一応は成長産業なので、どこの会社でも採用に[…]

関連記事

中小企業の人材採用は大変ですよね? 私もIT企業に勤めている時、自社の採用(新卒採用のみですが)を主導する立場にありました。 皆さんもご存知と思いますが、従業員100名~200名の中小IT企業なんて、掃いて捨てる程世の中には存在[…]

とは言え、私が居た会社もどこにでもある中小IT企業でしたので、知名度が低く、営業が不要とまではならず、それなりの営業活動をしていました。

今回はそのやり方を紹介したいと思います。

知名度がないからこそ、地道な営業をしましょう

前述の通り、しっかりしたブランドを確立して、マーケティング視点でどう採用するかを考えるのが第一です。

しかし、知名度が低い中小企業の場合、それだけではちょっと弱いので、主として就職窓口への「地道な営業」をお勧めします。理由は以下の通りです。

  1. 仮に就職情報サイトに掲載しても埋没するだけで、効果は薄い
  2. 就職窓口の担当者も「良い会社」を求めている。「地道な営業」により「良い会社」と認知してもらうことに成功すれば、就職窓口との繋がりが構築できる
  3. 大量採用するわけではないのだから、「地道な営業」によって就職窓口との繋がりを構築した方が、費用対効果が高い
  4. 一度繋がりを作ってしまえば、長期間に渡る成果が期待できる

まずはターゲットを絞る

前述の繰り返しになりますが、商(製)品を営業する場合、「売れそうな顧客を見つける」というのが最初に来ます。

採用も全く同じで「自社が欲しい人材像」そして「入社してくれそうな人」はどんな人か? という二つの視点を考えることから始まります。
具体的なポイントは以下のようなものでしょう。

視点1:自社が欲しい人材像 視点2:入社してくれそうな人
・自社の仕事は、高度かつ高スキルを必要とするものか?
・将来の幹部候補を採用したいのか? それとも単なる作業者を採用したいのか?
・自社の業態
・自社の規模
・自社の特徴(ブランド)は、ユニークか
(すごくユニークであれば学歴に関わらず一定数入社があるので営業不要です)

有体に言うと、どこの会社もいわゆる「そこそこよい学校出身の人」を欲しがります。
実は、今ある採用プロセスに置いては、応募者個々の能力を見極めるのは、かなり難しいので、結局は、学歴しか判断の拠り所がありません。
ですので、「そこそこよい学校出身の人」を欲しがるというのは、仕方無い面はありますが、それでは知名度で劣る中小企業は太刀打ちできません。

中小企業は主戦場を小さくする。これはビジネスでも採用でも同じでしょう。

現実問題として、中小企業では、新卒、中途共有名大学卒の採用は無理ですし、そこそこの良い学校卒の採用も難しいでしょう。
「自社が欲しい人材像」と「入社してくれそうな人」の見合いから、比較的苦労なく採用できる道を選ぶか、苦労してでも、最悪採用できなくても、優秀(と思われる)人材採用を選ぶかは、自社で決めることです。

私の知っているIT企業は、主に地方の中堅以下の大学をターゲットにしていました。IT企業と言っても「派遣」が主の会社で、採用したら即派遣に出すということをしていた会社ですから、(これの是非は置いておいて)優秀さより頭数優先なのです。
そして、それなりの人数を採用していれば、少ないながら優秀な人が入社しますから、その人を将来の幹部として育成すればいいのです。

一方で、別のIT企業では、有名大学卒しかか採らない。ただし学部には拘らない。地頭重視。という採用方針でした。
この会社は、人材育成に自信を持っていたので、地頭が良い人に来てもらって、効率の良い教育をしていました。

当然、後者は前者より採用そのものは苦戦していますが、自前でビジネスをしているので頭数を追う必要はない。「採れなければそれで構わないという」方針ですので、気にしていないのです。

これが会社の方針であり、それに基づいて「ターゲットを絞る」ということです。

頑張って営業活動をしましょう

ターゲットが絞れたら、あとは頑張って営業するだけです。
採用活動でも商(製)品の営業と同じですが、売上数と採用数を比べるまでもなく、採用数は圧倒的に少ないので、活動量も圧倒的に少なくていいはず。ピンポインを狙った営業となります。

どのような活動になるか、紹介します。

営業対象を絞りこむ

そもそも採用人数が多くなければ、営業範囲を広げなくて良いです。例えば新卒で1名しか採用しないのであれば、お付き合いする学校は3校もあれば十分でしょう。

新卒か中途か ターゲット 営業先の数
新卒 大学卒 採用人数×3~5校
高校卒 採用人数×1~2校
中途 大学卒 地元のハローワーク+行政+採用メディア
不問 地元のハローワーク+行政

むしろ、少ない営業先を深堀りしていくイメージで臨みましょう。

営業ツールを揃える

採用での営業ツールは、求人票、募集要綱、会社案内などです。これらを揃えましょう。

求人票や募集要綱には基本的な採用条件や雇用条件です。法的な制限がありますのでそれに従って作成します。
一方で、会社案内は、自社独自のものですから、ブランディング活動で導き出した、自社のブランド(特徴)を大いにPRしましょう。

商(製)品の営業と同じで、相手が「この会社はよい」と判断するかどうかは、会社案内と営業の説明にかかっていますので、力を込めて作りましょう。

自社のPRストーリーを考える

商(製)品の良い点、場合によっては悪い点も説明するのが営業の第一歩です。同じく考えれば、採用においては、自社の良い点、悪い点を説明します。
自社のブランドを中心に説明することを心がけてください。「リンク」で考えた、「自社のブランドをストーリー」で伝えることが出来たらベストです。

自社のブランドを体現している人が担当する

営業は営業マンが好かれるということも大きな要素です。
採用の場合も、相手に好かれる人はもちろん、以下のような「自社のブランドを体現している人」が営業活動をした方が良いです。

①自社のブランドを心の底から信じている人
②自社のブランドにマッチした人(誠実な会社の担当者が胡散臭い人だったら逆効果)

本当は、社長が営業に出向くべきです。

社員のメリットも伝える

当社に来たらこんなメリットがあるというのが分かるように伝えましょう。

「自社のブランドをストーリー」で伝えると書きましたが、ストーリー化すべきポイントはここです。

「我々の会社は、〇〇という理念の元、××というビジネスを推進しております。したがって将来社員には△△になってもらうべく、教育などの準備を進めています」

という文脈で説明しましょう。

この△△の部分が、社員のメリットとなり、それに真実味があれば、就職窓口から「良い会社」であると認識されるでしょう。

社会性のある取組みの方が良い

前項の「我々の会社は、〇〇という理念の元、××というビジネスを推進しております。したがって将来社員には△△になってもらうべく、教育などの準備を進めています」

の××の部分が、社会性のある取組であれば、さらに「良い会社」である認識は高まるでしょう。

真実であること

自社のブランドは、商(製)品と違って実体がありません。また、将来の未確定なことを話すことが多いので、虚言となりやすいものです。
社会性や相手のメリットに拘るあまり、虚構を展開することがないよう気を付けてください。

実行責任、結果責任を取る

上記の(5)~(7)については、元々は本気でやろうと思っていたとしても、いざ実行したら出来なかった。ということは多々あります。また、頑張って実行したとしても、結果が出ないこともあります。環境の変化で中止にせざるを得ないこともあるでしょう。

これらは当然あり得る話で、それをもって非難されることではないのですが、「それがあるから入社した」という人が少なからず存在するはずなので、まずは実行責任のある人、そして出来ないときに責任を取れる人が、説明すべきです。

そこを安易に考えていると、こういうドツボにハマります。
これではお互いが不幸です。

関連記事

私が新卒から29年間勤めた会社、入社当初は酷いものだったのですが、3年目に入社して来た上司は素晴らしい人で、ある時期までは、自分にとって理想の上司でした。 ここのブログは、企業の採用や教育を考えて行こうというのがテーマですので、過去私[…]

営業の順序

営業の順序は、まずは採用の窓口から始めざるを得ないです。
採用窓口の担当者が「良い会社」と認識してもらうよう努力し、繋がりを構築します。

繋がりが構築できれば、様々な形で求職者を紹介してもらいやすくなりますので、次は求職者に向けて同じようにアプローチして行きます。

PDCAを回す

ここまで、自社のブランドを確立し、マーケティングと地道な営業をすることによって、採用を成功させるというお話しをしてきました。

しかし、実は、自社のブランドもマーケティングや地道な営業の手段も、最初の段階では仮説に過ぎません。会社内でイメージしていた事と、外部から見たイメージは違うことが多いなど、始めてみると、いろいろな気付きがあります。

この気付きを元に、改善、改良することをお勧めします。以下の視点で見直して行くと良いでしょう。

短期PDCA

目標採用人数に対して活動の質と量は適性か?

実行してみたら、活動量が足りない。逆に過剰な活動をしている。ということが分かってくると思います。活動量が足りないと成果は出ませんから改善が必要です。過剰な活動もコスト面で見直しが必要です。

中長期PDCA

ターゲットは合致しているか?

人材像は内輪での思い込みから発している仮説でしかありません。実は採用活動は、本当に欲しい人材を探すという活動でもあります。

自社のブランドの真実性の検証

同様に、自社のブランド(特徴)も内輪での思い込みから発している仮説でしかありません。採用をきっかけにして、本当の自社像を探すという活動をすればビジネスにも役立つでしょう。時には、理念から見直しも必要です。

会社は商店じゃない。
組織を作り「会社」を作ること 採用はそのスタート地点

「求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。」こんなことの繰り返しで、ずっと]採用活動を続けている。そんなことありませんか?

「曖昧な定義で“戦力”になりそうな人を探す」より「“戦力”を定義し」、「組織を作り」、その上で「自社にマッチした考えの人を採用し」、「育て」、「戦力にする」と視点を変えてみましょう。

これすなわち経営。採用活動こそが最初に経営の力が試される場なのです。