地方活性化の取組みと失敗

私が新卒から29年間勤めた会社、入社当初は酷いものだったのですが、3年目に入社して来た上司は素晴らしい人で、ある時期までは、自分にとって理想の上司でした。

ここのブログは、企業の採用や教育を考えて行こうというのがテーマですので、過去私が部下として経験したマネジメントや経営手法を紹介したいと思います。

今回は「地方活性化の取組み」です。

“地方の若者を採用し、東京で一人前になったら地元に帰って、地元の活性化に寄与する”という取組みでしたが、結果は見事な失敗。
地方在住の若者の多くを東京に呼び寄せ、そのほとんどが地元には帰らない。という当初の意図とは真逆、「東京一極集中」に寄与した取組みになってしまいました。

私が退職することになった原因なんで、これ書くと決めてから寝れない夜が続いたんですが。。。。

25年前の思いついたのは天才

1990年代半ばに、首都圏での採用に行き詰まり、採用の範囲を地方へ広げたのがそもそもの始まり。
地方の大学や高専の先生と接触して行く中で、彼らから地方での就職の現状を聞き、そこから件の上司が「地方の若者を採用し、東京で一人前になったら地元に帰って、インターネットで本社と繋がりつつ、地元の活性化に寄与する」というコンセプトを打ち出したのがきっかけです。

コロナ狂騒以降、地方在住・テレワークで仕事というのは結構耳にしますが、1990年代半ばにこのコンセプトを聞いた私には、斬新で衝撃的、本気で「この人天才かも」と思いましたし、今でもそう思っています。

採用の中心コンセプトに

首都圏出身の私でさえ「東京一極集中という問題を解決し、地方の活性化する素晴らしい考え」と思ったくらいですから、地方の大学や高専の先生、学生も当然興味を持ちます。

相手が興味を持つことを前面に押し出せば、「採用」という仕事の成功確率は高まりますので、これを中心コンセプトにするのは、当然のことです。

そして、徐々に首都圏の採用を減らし、3年後には100%地方からの採用に切り替えました。
当時から採用数は5~10人です。正確な年は覚えていないのですが、2000年に100%地方採用になっていたのは確実です。それから20年ですから、地方出身で入社した人は優に100人を超えています。

唯一にして最大のミス「具体化は未だの状態」

その一方で、採用した新人に対しては、「一人前になるのに10年以上かかる」から今は仕事を通じて学ぶことを求めたのみで、10年後の具体的な戦略、戦術はいついては、件の上司が当然考えているものという認識で、私は検討していません。詳細に確認もしませんでした。

これが私の犯した唯一にして最大のミスです。そもそも就職という人生の中でも大きな転機に、このようなコンセプトを打ち出し採用するのであれば、最低でもその実現可能性を検証すべきでした。

「10年後だから取りあえずなんでもいいから学べ」ではなく「10年後のために今何を学ぶべきか?」を指示しなければ、いざ実行という段階では全く役に立たない知識・スキルの人しかいない可能性もありますので、実現可能性はともかく最低限以下の検討は必要でした。

  • 従来と違う働き方なのだから、今までと違うビジネスモデルが必要では?という問いとその検討
  • 仮に今までと違うビジネスモデルを構築しなければならないのであれば、彼らをこれからの10年でどのような人材に育て行くのか?という問いと検討

もちろん、当時件の上司は50代半ばで社長であり、発案者でもあります。その一方で、社員は一番の年長者が私を含めて30代前半が数人で経験・実力ともまだまだです。その間の世代はいないという会社でしたから、社長自身が、(社員に言わないまでも)その実現可能性を検証し、今何をすべきかを考えているのは当然ですし、それこそが社長の役割です。
彼の責任が最も重いのは言うまでもありません。

採用した責任

一方、当時の採用は、件の上司と私の2名で行っていましたから、私にも「将来地元に戻る」というコンセプトで採用した責任がかなり、どころか大きくあります。

もちろんそういう立場であることは分かっていますから、私なりに10年後の準備を進めてました。総務内で、在宅勤務の実証実験をしたり、将来社員が地元に帰ったときに応援、支援をしてくれるだろう、その地域の経営者の方々との繋がりを深めたり。
これらの活動については、当然上司に報告、相談の上実施していました。
また、活動を通じて、私自身の中に、かなり大雑把ですが戦略や戦術めいたものが固まって行きます。これも当然ですが、上司に話をしています。

そして、採用を始めてから15年ほど経た後、新規ビジネス部門を統括することになりました。
この時点ですでに10年を大きく経過していますが、「地方活性化」は全く具体化していません。
私は、「地方活性化」を前面に出して採用している立場ですし、事前にいろいろ活動しているし、実現に向けての方法も考えていたのですから、自分が遅れに遅れている「地方活性化」というテーマを実現すべきと考え、取組み始めたことを覚えています。

前述の通り、活動の報告、相談時、あるいは戦略や戦術の話をしたとき、特に反対されることもなかったので、この時点では、彼が考えていることとの方向性は合致していたはずです。
しかし結局、過去の私の活動や、実現のための方法を件の上司から非難され、その内容が支離滅裂、かつ代案や的確なアドバイスもなく、ただただ非難に終始することに幻滅し、「この人は何も考えてなかった」という実は少し前から薄々感じていていたことを確信するに至りました。

これを確信したとき、恐らく人生で一番の衝撃を受けました。
初期段階からその時まで、地元に戻れる目算もない架空の話。その架空の話で多くの人を釣って、東京に呼び寄せた。これは件の上司の打ち立てた「理念」に反する行為です。
そして私はその「詐欺のような行為の片棒担いだ」ということ。
当時、そのような物言いが相手の逆鱗に触れてトラブルになったのですが、感情が落ち着いている今振返っても、この認識は変わりません。棒のもう一方を担いでいたのが誰かなどどうでもよく、私が犯した罪深き所業と思っています。

会社の根幹に関わる問題

ここで少し脱線します。
サラリーマン的には「そもそも上司なんて思いつきで方針を出し、その実現可能性の検討なんて部下に丸投げするもの」という常識みたいなものがあります。だから「何も考えていない」と知って衝撃を受ける。という反応はナイーブ過ぎるとも言えます。

しかしこの会社に限って言えば、普段から「上司は上司らしく」なんて言ってますし、「自分で考える教育」と標ぼうしているのですから、当の上司が何も考えていない。というのは、前述の理念に反しているでは?という点を含め、会社の根幹に関わる問題なのです。

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どうすれば良かったか?

さて、上司のことは置いておいて、結局私はどうすれば良かったのでしょうか?
後知恵に過ぎませんが、以下を反省しています。

  1. 初期段階、いくら相手が社長でこちらが若造でも、自分が深く考えず相手の言説に不用意に乗ってしまったのは間違いでした。その状態で学生に説明しているのですから無責任極まりないです。さらに言えば、自分の人生を考えても、思考までを他者依存することは危険極まりないです。
  2. 件の上司が何も考えてないという事実に直面したとき、取りあえず自分は方法まで考えているのですから、そもそもの目的を優先させ、足手まといな上司は切り捨てるべきでした。成功したかは分かりませんが、理論的にはそれが出来る手段はあったのですが、それをやるのは忍びないという情を優先してしまいました。しかし、相手はそんなことはお構いなしの、生来の喧嘩好き、喧嘩上手だったので、見事にやられました。

結局、件の上司は何も考えていなかったので、もう一方の当事者である私がその会社を退職することで地方活性化の取組みを実現する確率はかなり低くなります。事実、私が退職した後の動きを見ても、私が引導を渡したと言って良いでしょう。この事実も私の罪深き所業の一つです。

現実を見回せば、新しい取組みを志向しても、実行段階で頓挫することは多くあると思います。私の経験したケースが一般的かどうか分かりませんが、これから新しい取組みをしようとしている皆さんの参考に少しでもなれば幸いです。

会社は商店じゃない。
組織を作り「会社」を作ること 採用はそのスタート地点

「求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。」こんなことの繰り返しで、ずっと]採用活動を続けている。そんなことありませんか?

「曖昧な定義で“戦力”になりそうな人を探す」より「“戦力”を定義し」、「組織を作り」、その上で「自社にマッチした考えの人を採用し」、「育て」、「戦力にする」と視点を変えてみましょう。

これすなわち経営。採用活動こそが最初に経営の力が試される場なのです。

>クソゲー採用を卒業しませんか?

クソゲー採用を卒業しませんか?

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今までの習慣やルールを変えて、まともな採用をしてみませんか?そう考える方はこちらまで。

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