中小企業の人材採用は大変ですよね?
私もIT企業に勤めている時、自社の採用(新卒採用のみですが)を主導する立場にありました。
皆さんもご存知と思いますが、従業員100名~200名の中小IT企業なんて、掃いて捨てる程世の中には存在し、一応は成長産業なので、どこの会社でも採用には苦労しています。
私の所属していた会社も従業員140名程度でしたから、掃いて捨てる程あった中小IT企業。一般的には採用に苦戦する会社です。
しかし、私自身実は採用活動で苦労も苦戦もした記憶はありません。
どちらかと言うと「楽勝」でした。
どんなことをやっていたかと言うと、採用にマーケティングやブランディングの考え方を導入していただけです。
マーケティング・ブランディングというと難しいかと思うかもしれませんが、それは、大手企業などが自社の製品のマーケティングのお話し。
採用という狭い範囲に限定すれば、専門知識が無くても、それなりの事は出来ますし、するべきことをすれば成果は出ます。
ブランドは伝えてこそ意味がある
今回は、以前お伝えした「ブランド」をどうやって求職者に伝えるか?についてです。
私がIT企業に勤めている時、自社の採用(新卒採用のみですが)を主導する立場にありました。皆さんもご存知と思いますが、従業員100名~200名の中小IT企業なんて、掃いて捨てる程世の中には存在し、一応は成長産業なので、どこの会社でも採用に[…]
一生懸命ブランディングしたところで、それを伝えなければ宝の持ち腐れです。上記リンク内で、「ブランドを統一する」と簡単に触れましたが、それを詳しく説明します。
ある人が就職をしようと思い立ったとき、以下のプロセスで動くことが考えられます。
会社を知る→興味を持って調べる→受験候補になる→実際に受験する会社の絞り込み→入社試験を受ける
求職者は、このそれぞれの段階で会社のことを調べる訳です。ですから、
- まず知ってもらうこと
- そして会社に共感してもらうこと
が重要です。
ブランドを知らしめる方法
知名度の低い中小企業にとって、自社を知ってもらうという事が最も難しいです。
一方で、そんなに大量に採用するわけではないのが普通ですから、伝える相手を絞ることが出来ます。
就職の窓口に知ってもらう
いきなり本人に到達することはまず出来ませんが、窓口になる人には比較的簡単に到達します。
窓口になる人の立場になって考えると、彼らは「自信を持って紹介できる良い会社」を探しているのですから、当方のアプローチはまず拒みません。そして当方が「良い会社」であることを理解すれば、積極的に紹介してくれる存在となります。
具体的に見て行きましょう。
学校の先生や就職指導部署
特に新卒を採用する場合は、学校の先生や、就職指導部署の職員の方に知ってもらうことが必須です。しかし、これはどこの企業でもやっていること。だからこそブランドが役に立つのです。
「どこにでもありそうな会社」より「主張がはっきりしている」「小さいながらも社会性のある」会社の方が、「自信を持って紹介できる良い会社」なのです。
職安の職員
中途の場合は、職安に紹介を依頼することも多いでしょう。
職安の職員は公務員ですから、企業を差別して扱うことは出来ないでしょうが、彼らの立場でも、心情としては、「自信を持って紹介できる良い会社」とそれ以外の会社は違うというのは想像できると思います。
採用メディアや人材紹介会社の担当者
新卒でも中途でも、採用メディアなどを使うこともあるでしょう。
中小企業は結構な割合で、業者任せにしているようです。
しかし、彼らに任せた時点で、会社の個性は失われ、その他大勢の会社になってしまいます。
せっかくお金をかけているのですから、自社のブランドを大いに主張し、その路線でPRしてもらいましょう。
実は、採用メディアから見ても「主張がはっきりしている会社」の方がやり易いのです。その他大勢の会社より個性のある会社の方が、内定する確率は高いですから。
合同就職セミナーで求職者に直接話をする
実際に求職者に会えるという意味では、自治体や学校主催の「合同就職セミナー」には積極的に参加してください。
そして集まった求職者に、自社の「ブランド」を大いに語ってください。
「中小企業の採用活動にブランディングが役立つ理由、その具体的方法は?」で、ブランドはストーリー化出来ると書きましたが、自社ブランドをストーリーとして語るのがベストです。
私の経験では、合同就職セミナーで「採用条件」や「福利厚生」の話をする会社が多いのですが、そんな文書を見れば分かること、しかもどの会社も大差ないことに時間を割かずに、自社の思いや夢をストーリーとして語り、他社と差別化を図りましょう。
企業も求職者もせっかく時間を作って会うのですから、その時間を有意義に使って、ファンを作るつもりで話してください。
元々の目的は、「知ってもらうこと」そして「共感してもらうこと」です。
また、実は、この「合同就職セミナー」を主管するのも、前項で挙げた、学校の就職指導部署や職安です。したがって、「自信を持って紹介できる良い会社」と彼らが考える会社であれば、優先的に参加の打診があるはずです。
私の経験では、特に大学主催の就職セミナーでは、人が集まりやすい場所を割り当ててくれたり、学生に対して、当方のブースへの訪問を働きかけたりしてくれることも多いです。
自社主催のセミナーや会社説明会
就職セミナーで良い感触が得られた場合、自社に来てもらうこともあると思います。
この時も「採用条件」や「福利厚生」の話は程々にして、自社ブランドをストーリーとして熱く語ってください。合同セミナーなどで話した内容と同じで構いません。
所詮、合同セミナーは短時間ですし、求職者も多数の会社を回っているので、会社のことを覚えていません。同じような話をすることで、薄れつつある記憶を呼び覚ますことに主眼を置きましょう。
面接試験
自社ブランドに共感が得られれば、試験の申込があると思います。
世の中の多くの人は、「会社は採用する側」と考え強い立場と誤解していますが、私は会社と個人は対等だと考えています。
対等な人と人の会話であれば、「自分はこう思っている」というのが先でしょう。勿論、自社のブランドをベースに自分の思いをぶつけるのが先ということです。
相手がそれに共感すれば、相応の反応があるはずです。その反応を見て、自社に来てもらうかどうか判断すればいいわけです。
一番ダメなのは、「採用してやる」とばかりに尋問をすることです。今はもう死語かと思いますが、圧迫面接なんて最低です。こんなことをしたら今まで築き上げて来たイメージは脆くも崩れます。
社長が話すべき
以上、中小企業の採用では様々な場面で自社のブランドを話すことが肝要です。
では、誰がその話しをしたら良いでしょうか?
可能であれば、社長が前面に立って話をすべきです。
社長自ら前面に立って採用活動をする。自社のブランドについて熱く語る。これこそが大手企業にはない、中小企業の大きな特徴だからです。
是非チャレンジしてください。
共感してもらうためにやる事
必要なのは一点、「自社のブランドが真実である」ことです。
ウケ狙いで、ありもしないことや、出来もしないことをアピールしがちですが、嘘だと発覚したときに信用は失墜します。
ただ、全ての人に共感してもらうことは出来ないし、必要のないことです。要は自社が採用したい人の数だけ共感してもらえばいいので、難しく考える必要はありません。「私たちの会社は、こういうことを大事にしており、こういうことをして行きたい」が明確であれば十分です。
その上で、全てを統一することが重要です。
従業員
従業員の認識統一と共感が得られているか? が、最も大事です。
自社のブランドに共感した人を採用しようとしているにも関わらず、既に居る従業員がその自社ブランドを認識していない、認識していても共感していない。というのは、その自社ブランドは真実でないからです。
会社案内
会社案内は、合同セミナーなどで資料として配布すると思います。セミナーに参加した人が、後日「どのような会社だったか?」と考えながら会社案内を見ることを想像してください。
話した内容と会社案内に書いてあることが違うとなれば、まず応募はしないでしょう。
「話した内容をより詳しく、具体的に整理されたもの」が、会社案内であるべきです。
当然、採用条件や福利厚生などを記載しますが、それはそもそも「セミナーでは説明していないから読んでください」というもので、こちらが主題にならないようにしましょう。
ホームページ
今では、興味を持った人が見るのは会社案内よりホームページの方が多いでしょう。
したがって、こちらも会社案内同様「話した内容をより詳しく、具体的に整理された内容」にしてください。
最低限採用に関係するページを自社ブランドに統一することは必須ですが、出来れば、自社のホームページは全て、自社ブランドで統一した方が良いです。
何故かというと、求職者が注目するような自社ブランドは、ビジネスにも有効な可能性が高いからです。そして、ビジネス面でも自社ブランドを意識すれば、自社ブランドはより洗練され、採用にも繋がってくるという好循環が生まれます。
外部メディアを活用する場合
外部のメディアを活用する場合でも、お任せでなく、自社のブランドに沿った内容にするために、自社が主体となってメディアの内容を作って行きましょう。
文章や構成については、プロに程度任せて構いませんが、文章の内容や、どこを強調するかは、当方の領分です。妥協せずに進めましょう。
ターゲットの選定
前項まで具体的なPR方法について述べてきました。
マーケティング視点で考えると、押さえておかなければならないポイントがあります。
それは「ターゲットを決める」ことです。ある意味これが一番大事です。
採用活動の場合のターゲットとは、どのような人を狙うか?ということになります。
新卒でも中途でも、相対的に優秀な人に当たる確率の高い、有名大学出身の人が欲しいのが当り前。将来の伸びしろが期待できる、若者が欲しいのも分かります。
しかし、これはどこも同じですから、結局は、大手企業や中小企業でも有名な企業と勝負することになりますので、いくら「真実であるブランド」を構築しても、不利なことは否めません。
仮に、思い切って「年齢経験学歴不問」とし、「入社してから責任を持って育成する」と、その具体策もしっかり考えていれば、実はこれも立派なブランドになり得ます。世の中には、そんなことまで考えている企業は少ないですから。
新卒で言えば、一流大学か? 地方のFラン大学か? あるいは高校か?
中途で言えば、若者か? 中高年か?
この点をしっかり考えて採用活動に臨まなくては、成功は難しいでしょう。
不採用時こそ気を付けるべき
最後に、応募してくれたが、縁がなく不採用にしたとき気を付けることについて話ます。
有体に言うと「ぞんざいに扱うな」です。
意外と、不採用にした応募者をぞんざいに扱っている企業が多くあります。テンプレート化した「お祈りメール」なんてその典型です。
そもそも自社のブランドに共感してもらって採用に繋げようと考えているのです。
共感してくれたものの、ご縁がなかっただけですから、「共感してもらって感謝します」という心からのお礼と、その人が次のステップに行くときに参考となるようなものを贈る。
そういう視点で、対応し、そこに嘘がなければ、共感してくれた人は、今後も自社のファンでいてくれるはずです。
残念ながらご縁がなかった人でもきちんと対応するというのが、「真実のブランド」への道の一つでしょう。