中小企業の採用活動にブランディングが役立つ理由、その具体的方法は?

  • 2021年4月9日
  • 2021年5月18日
  • 採用

私がIT企業に勤めている時、自社の採用(新卒採用のみですが)を主導する立場にありました。
皆さんもご存知と思いますが、従業員100名~200名の中小IT企業なんて、掃いて捨てる程世の中には存在し、一応は成長産業なので、どこの会社でも採用には苦労しています。

私の所属していた会社も従業員140名程度でしたから、掃いて捨てる程あった中小IT企業。一般的には採用に苦戦する会社です。

しかし、私自身実は採用活動で苦労も苦戦もした記憶はありません。どちらかと言うと「楽勝」。世の中の会社、大企業から小企業までの採用活動を横目で見ていて、「あれじゃ苦労するのは当り前」とさえ思っていました。

どんなことをやっていたかと言うと「新卒採用をマーケティング視点でやってた」だけです。

その概略はこちらをご覧いただくとして、今回はその中の「ブランディング」について詳しく説明します。

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中小企業がお金をかけず採用を成功させるには?

必要なのは、たった一つ。自社の「ブランド」を作ることです。

理由は、「ブランド」は実は自社にもうすでにあることを、上手く表現するだけなので、それほどお金がかからないからです。

例えば、世の中に無い製品を開発しているのに、あまり世の中にアピールしていない。ビジネスの上では特にアピールする必要性を感じない。そういった製品はありませんか?
それを上手く表現することが、「ブランディング」であり、誰かに認知されれば、すなわちそれが「ブランド」となります。

周囲を見回してみると、「あんなことやっている」と少し有名な企業はあるでしょう?
その企業は、採用で苦労していますか? 恐らく苦労していません。

特徴が見えなければ広告サイトで埋もれるのは必然

有名企業ならともかく、中小企業は、自社の特徴を前面に出すべきです。
求人広告サイトに出稿したとして、特に特徴のない中小企業は、そもそも見つけるのが困難。運よく見つけてくれたとしても、興味を引くことはまずありません。
これは、ご自身が何かをネットで探す時を思い浮かべれば分かるはずです。

逆に言えば、今の有名企業は、過去にブランディング活動に注力したから、今の有名企業という地位があるわけで、今までブランディングの努力をしたことのない中小企業が、有名企業に太刀打ちできる訳がありません。

中小企業のブランドになり得るもの

ブランドと言っても何もない!という声が聞こえてきそうですが、そんなことはありません。

それなりの年数を続けてきた企業、ましてや今採用をしようと考えるくらいの企業には、何か特徴があるはずです。ただそれに気付いていないだけです。

まず気付く。そしてそれを上手く表現することで、ブランドは確立できます。

以下のブランドになり得るものを説明します。

理念やビジョン

そもそも「理念」や「ビジョン」は、経営者がこういう会社にしたいと宣言するものであり、経営者の社員に対して約束です。

要は「自分はこんな会社にしたいんだ!」という経営者の叫びですから、もうそれだけでその会社の特徴でしょう。

社風

どこの会社でも、社員が醸し出す独特の雰囲気があります。
「あの会社は真面目だ」とか「あの会社はノリがいい」など。

これは大抵は理念と対になっていいます。何故かと言うと、理念に共感するような素養の人が集まってくるからです。
そういった社員が社風を醸成し、結果居心地がいいから、辞めないのです。

こうやって醸成された「社風」もその企業の特徴です。

ビジネスでの自社の強み

「実はこんなもの作っていて、他社には作れない」とか「実は自社が作っているのは、〇〇の部品なんだよね」とか「このサービス結構評判いいんだよね」というのがあれば十分ブランドになります。

以前、聞いた話ですが、

イタリアの繊維業者は、「デザイナーは、自分たちの作った糸を見て、イマジネーションを刺激され、良いデザインになるんだ! つまりは、世界的に有名なイタリアのファッションを支えているのは、自分たち繊維業者だ!」と言うそうです。

いかにもイタリア人っぽいですが、言われてみれば確かにそうです。繊維産業が無ければ、ファッションもありませんからね。

よく考えてみれば、どこの会社もこのような存在のはずです。
「うちが日本の〇〇を支えているだ!」というのは、十分ブランドです。未だ気付いていないだけです。

将来の事業計画

理念やビジョンに基づいて、「近い将来こんな事業を興そう」と考えているとしたら、それもブランドになり得ます。

理念やビジョンは「自分はこんな会社にしたいんだ!」という経営者の叫び。と表現しましたが、それに基づく事業計画は、経営者を始めその会社に所属する人の夢の実現への計画と言えるものです。

より具体的という意味で、理念・ビジョン・社風より強いブランドになるでしょう。

本業以外の取組み

もし、本業以外で何か取組みをしているのであれば、それもブランド候補です。

以下は以前講演で聞いた話です。

富山に光岡自動車という、中古車販売が本業の会社があります。
実は、この光岡自動車、日本で10番目の自動車メーカーでもあります。
自動車製造・販売の収支は知らないのですが、実はこの「自動車メーカー」というブランドが、「技術の確かさ」の裏付けになり、本業である中古車販売が好調なのだそうです。
「自動車を作るくらいの技術力のある会社なんだから、中古車整備も確かだろう」と顧客が考えるのが好調の要因である。と聞きました。

これは実際のビジネスの例ですが、採用に向けてのブランディングでも勿論有効です。

その時の講演者が「本業以外で力を入れて取組んでいることありませんか?それがすなわちブランドです」と話をしていたのですが、正しくその通りと思います。

ブランドの発見方法

社長が一人で考えても良いですが、社員も交えて考えてみるのも良いと思います。
社風のところでも述べましたが、社員は無意識に「理念やビジョン」「社風」に惹かれて入社し、今でも在籍しているのです。その無意識を顕在化することで、皆が惹かれている点(=自社のブランド)が発見できます。

お勧めの方法

聞いたことがある方も多いと思いますが、SWOT分析という古典的な経営分析手法があります。
みんなで話し合うという方法をお勧めします。(やり方はSWOT分析で検索すれば沢山出てくるので、そちらで調べてください)

ただし、得てして「会社の弱み(悪い事)」ばかり出て、それで盛り上がって終わり(特に経営者不在の飲み会などではこうなる)となるので、そこは気を付けてください。

経営者を交えて、「会社の強み」のみを、盛り上がりを狙ってビールでも飲みながら話してみる。というのが良いかもしれません。

思わぬ副産物

ついでですが、思わぬ副産物があります。

実は無意識だった自社の特徴を知る事は社員にとって幸せですよね?

社員の意識に自社の特徴が顕在化する。それが自信に繋がります。

実は採用にも、この「自信」は大事です。求職者と接触する人が、自分の会社に自信を持っていなければ、上手く説明も出来ないでしょう。

その意味では「自分の会社に自信がある」というのが、一番のブランドかもしれません。

ブランドを明確化

続いて、ブランド候補からブランドを選ぶ作業です。
はっきり言って、これは簡単です。

ブランド候補を並べて見てください。それぞれ関連付けられませんか?

例えば、「うちの会社のこういう点好きだな」(社風)、「それってやっぱり理念がしっかりしているからじゃない?」(理念)「それもあるけど、お客さんもいい所が多いのもあるんじゃないかと思う」(ビジネスの強み)「でも今の仕事はうちらしさがまだまだ出せていないよね。出来れば〇〇みたいなことやりたいよね」「それ、うちらしくていいね~」(将来の事業計画)という感じ関連付けられ、それがそのまま会社のストーリーになるはず。

このようにブランドはストーリーで語れるものです。

大事なのは真実であること

以上のプロセスを経ることで、自社のブランドが見えてくるでしょう。

ここで、一点気を付けなければならないことをお伝えします。

採用するためにウケが良さそうなことに越したことはありませんが、ウケ狙いのみは止めましょう。例えば、「将来の事業」は、単なる思いつきで、出来そうもないこと言わない。
新規事業は、現実問題として、最終的に成功しないこともありますが、ブランドとして挙げたからには、経営者が実行責任と結果責任は持つべきです。

それがないと、こうなります。

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また、お題目化した「理念」も止めておきましょう。お題目化しているというのは、嘘でしかないのですから、どうせならこれを機にそんなお題目は捨てて、新しい理念を定めましょう。

結局、入社してみたら「嘘だった」と本人が思うようでは、本末転倒です。

全てをブランドで統一する

ブランドが確立し、特にそれをストーリーで語れるようにあれば、本物として使えるでしょう。以下を統一して行きましょう。

  • ホームページやパンフレット

会社からの情報発信は、ブランドとそのストーリーで統一しましょう。
出来れば全面的に変えた方が良いですが、最低でも採用に関わるページは、統一してください。

  • 求職者に向けての話し

これは、ブランドとそのストーリー一本で行きます。
よく、採用条件や福利厚生などを一生懸命説明している会社を見かけますが、そんなのパンフレットを読んでください。で構いません。
相手の心に響く話しに時間を割きましょう。

  • 影響力のある人へのアプローチもブランドで

求職者だけではなく、彼らを紹介してくれる人、新卒で言えば、学校の先生や就職担当部署の人、中途であれば、ハローワークや就職情報会社の人たちです。
彼らが自社に共感してくれれば、それにマッチした人を紹介してくれる可能性が高まります。

  • 今やっている仕事の定義

既に、SWOT分析やブランド明確化のプロセスを通じて、ある程度自分たちの仕事の定義は固まっていると思いますが、改めて明確化しましょう。
今やっている仕事はブランドから見て、どの位置付けか?ブランドから見て、今後何をして行くべきか?

これらの問いを発し、回答を見つけて行くことで、ブランドと実際にやっていることの意味が一致し、より一層社内に定着します。そして徐々に本物になって行きます。

最初に「今の有名企業は、過去にブランディング活動に注力したから、今の有名企業という地位がある」述べましたが、有名企業は、正しく言行一致しているから、有名ブランドになったのです。

会社は商店じゃない。
組織を作り「会社」を作ること 採用はそのスタート地点

「求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。」こんなことの繰り返しで、ずっと]採用活動を続けている。そんなことありませんか?

「曖昧な定義で“戦力”になりそうな人を探す」より「“戦力”を定義し」、「組織を作り」、その上で「自社にマッチした考えの人を採用し」、「育て」、「戦力にする」と視点を変えてみましょう。

これすなわち経営。採用活動こそが最初に経営の力が試される場なのです。

>クソゲー採用を卒業しませんか?

クソゲー採用を卒業しませんか?

求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。こんなことの繰り返しで、ずっと採用活動を続けている中小企業が多いです。
私はこれを「採用活動のクソゲー化」と呼んでます。クソゲーとはルールや設定が酷すぎて、終わらない、つまらないゲームのこと。
今までの習慣やルールを変えて、まともな採用をしてみませんか?そう考える方はこちらまで。

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