中小企業で総務部長を採用したい!スキルの見極めは難しい

  • 2020年10月30日
  • 2021年5月18日
  • 採用

もし総務部長を採用したいとしたら、どうやったら良いでしょうか?いろいろ考えて行きたいと思います。

なお、文中に「スキル」や「能力」、「素質」などが出てきますが、この文では以下の通り定義します。

「スキル」:経験や学習により身に付けた能力(広義)と定義します。
「能力」(狭義):その人が元々持っていた能力(広義)と定義します。文中では、特に断りのない限り「能力」とは狭義の能力を指します。
「素質」:その人が潜在的に持っている能力(広義)と定義します。

総務部長は信用が第一?

総務部長というと、ある意味会社の顔ですし、社長の右腕とも言えますし、(企業規模によっては)経理なども担当するので、人としての信用が第一と考える企業は多いでしょう。

そのため、中小企業では、社長の古くからの知り合いに依頼することも多いように思います。
このような知り合いが居ない場合は、取引銀行に人材の斡旋を依頼することも多いです。

そして「見事な失敗」に終わる事もしばしばあります。何故でしょう?

人としの信用はあってもスキルがマッチしない

分かり易いのが、取引銀行に人材を斡旋してもらう場合です。
一般的に銀行は大きな企業なので、組織と分業がしっかり確立され、効率的に運用がされています。銀行出身の人は、この細分化された分業の中で仕事をしています。

一方で、多くの中小企業は、組織的な運用もなく分担も曖昧なままです。良く言えば守備範囲は臨機応変、気付いた人が何でもやります!というのが中小企業の仕事の仕方です。

昔「大企業は組織が仕事をする。中小企業は人が仕事をする」と言っていた人がいますが、まさしくその通りです。

今まで銀行という組織の力で仕事をしていた人が、人の力で仕事をする中小企業に来て戸惑うのは普通です。ましてそれなりの年齢で来るわけですから、対応し切れないケースも多いのは当り前です。

そしてこれは“社長の知り合い”でも同じこと。前職で何をしていて、その仕事内容が自社に適合するのか、本当は分からないまま採用しているのですから、蓋を開けてみたら、「合わない」というのが起こらない方がおかしいです。

能力が高い人であれば、合わなければ、努力して適合するでしょうが、そうではない人も多いのが現実です。

結局のところ、人としての信用も大事ですが、スキルや能力の方がもっと大事。

いつも言っているように会社というのは「得意分野の違う者同士が分業し利益を最大化するため」にある組織ですから、その人の能力と、それを活かした貢献が最も大事なのです。

就職サイトを使ってみては?

“社長の知り合い”の伝手も“銀行からの斡旋”も期待できない場合、リクルートなどの就職斡旋会社に依頼することになるでしょう。

昨今は、若年層が不足気味で、就職斡旋会社も苦労していますが、中高年は相変わらず余剰気味ですから、多くの就職斡旋会社が幹部人材の斡旋に力を入れています。

テレビCMで有名な【ビズリーチ】や、ハイクラス転職サイト【転機】なども有名所です。

前述の通り“社長の知り合い”や“銀行からの斡旋”でも上手く行かないことが多いのですから、失敗したとき、しがらみからにっちもさっちも行かないという状況に陥るのを避ける意味でも、このようなところを積極的に利用するのも手です。

しかし、今まで若年層の就職を中心にやっていたところは、ノウハウが生かせるのか疑問です。若年層は、若いだけで売りになりますが、総務部長は、そんなことで採用する訳には行きません。

繰り返しになりますが、人としての信用、そして最も大事な能力の見極めをどうするか?という点が課題になります。

実は私も試しに登録して、就職エージェントと接触してみましたが、正直「この人は、私の能力はおろか、スキルも正確に把握できていないだろう」という感想を持ちました。

スキルの見極めは難しいのは日本特有のこと

「欧米では就職、日本は就社」とよく言われます。
欧米の人は、職種に対する意識が強く、職種ごとの横の繋がりが強い。一方日本人は、どこの会社に入るかという意識が強く、入ってしまえば職種は会社任せという傾向が強いと言われています。

その例として、よく言われているのが、アメリカで使われている「ジョブ・ディスクリプション(職務内容記述書)」です。簡単に言うと、採用する人の担当する職務内容や必要なスキルなど詳細に記述した書類ですが、この「ジョブ・ディスクリプション」によって応募者のスキルが分かるとされています。

現地で経験したわけではないので、この真偽は分からないし、どの程度スキルが把握できるかも正確には分かっていませんが、その背景を想像すると、欧米なら当然あるだろうと考えています。

何故かと言うと、彼らは「標準化」の国だからです。

企業が違っても同じ職種なら、やることはほぼ一緒、求められるスキルもほぼ同じ。大学などの教育も標準化されたカリキュラムを履修すれば、ある程度の能力スキルは保持していると見做しても間違いがない。

一方で、日本を見ると、職種の標準化はせいぜい社内止まりで、同じ職種でも仕事の仕方は各企業まちまちですし、学校に対しても企業は、専門性を高める教育を期待していないというのが実情です。

余談ですが、この違いはITに現れています。

企業を問わず仕事が標準化されていれば、その仕事に適合した標準的なシステムを作り多くの会社に普及させれば良い。欧米はそうでしょう。

企業ごとに仕事のやり方が違うのであれば、ITシステムもその会社固有のものにせざるを得ません。現に日本のIT企業は、各企業ごとのオーダーメードシステム開発を中心に発展してきました。そしてこういう状態なので、大手銀行の経営統合に伴うシステム統合も大変になるのです。

IT化の前提は標準化です。それに基づき少ない労力で最大の利益を目指し発展してきた欧米のIT企業に、企業ごとのオーダーメードシステム開発(要は下請け)で発展してきた日本のIT企業が太刀打ちできないのでは、自明のことでしょう。

話を戻します。

標準化の国である欧米では、採用時に応募者のスキルの見極めることは比較的簡単です。
そうでない日本では、それはかなり難しい。というより出来ないと言う方が正しいです。

この優劣は別として、日本では、「職種に必要なスキル標準がない」故に「採用する際のスキルの見極めは難しい」という前提で採用活動を設計する必要があります。

本当に必要な人材はどんな人?

「ジョブ・ディスクリプション(職務内容記述書)」を作るのは無理としても、自社の総務部長には、どんなスキルが必要なのかは出来るだけ洗い出して、明記しましょう。

例えば、前任者の穴埋めであれば、前任者のスキルから必要スキルを抽出することは比較的簡単でしょう。
しかし本来は、総務部長に限らず、最上位概念(理念やビジョン)から、目的→目標→戦略→戦術と落として行って、現有戦力との見合いで、どんな人材が必要かを明確にし補充していく。というスタンスが正解です。詳しくは以下のリンクを参照ください。

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また、「職種に必要なスキル標準がない」のですから、入社する方は、入ってから「初耳だ!」ということが必ずあります。その時その人が対処するかが重要です。

すなわち、「自分が知らないことに直面したら、どんな手段を使ってもいいので、調べて解決するマインドと能力」が割と重要です。

私の経験では、年齢に関係なく、意外と本やネットで調べる、専門家に聞いてみるということを出来ない人が多いです。

自分の知らない分野のスキルを測れない問題

ある会社で、総務部が、総務・経理・人事などいわゆる事務系全般を担っていました。あるとき総務部の責任者が退職してしまい、後任を募集するに当り、総務部での仕事経験のない役員たちが、自社の習慣で「総務」の求人をしたら、経理や人事の経験のない人ばかりが応募し、しかも選考段階ではそれに気付かず採用してしまった。
という何とも間抜けな話を聞いたことがあります。

これはあまりにも極端で間抜けな話しですが、現実問題として、総務部長としてのスキルや能力を、総務部長の経験が無い人が測れるのか?ということがあります。

この点、職種の標準化が出来ていない日本では、リスクとして保有せざるを得ない点です。欧米はつくづく合理的ですね。

自社に適合するポイントは何?

前述した通り、最低でも「自社の総務部長に必要なスキル」は明確にしましょう。
その際、最上位概念(理念やビジョン)から、目的→目標→戦略→戦術と落として行って、現有戦力との見合いで、どんな人材が必要かを明確が必要なのか?という思考をすれば、総務部長の採用だけではなく、採用全般に役立つことでしょう。

しかし、職種の標準化が出来ていない以上、それだけでは足りないです。

その足りない点を埋めるのは何か?

私は、それは考え方や、仕事のセンス、すなわち能力に相当する部分ではないかと考えています。

前々項で、重要なポイントとして、「自分が知らないことに直面したら、どんな手段を使ってもいいので、調べて解決するマインドと能力」と書きましたが、実はこれも考え方や仕事のセンス、能力の一部です。

結局、今見えるスキルだけでは、分からないし、多分足りない。
であれば、足りないスキルを身に付ける源泉である、その人の考え方や、仕事のセンス、その人が元々持っている能力、素質と言い換えても良いと思いますが、それを測れば良いのではないか?と考えています。

素質を見極めて育てる

募集は、“社長の知り合い”でも“銀行からの斡旋”でも“就職斡旋会社”でもどこでも構いません。
その人の考え方や仕事のセンスが自社と合うか否か?という点に着目して採用し、スキルの足りない点は育てる、自ら育ってもらう。
そういう視点に変換すれば、採用もちょっと変わったものになるでしょう。

その具体的な方法はこちらを参照ください。

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そもそも社長に右腕は育てるもの

最初に、社長の右腕なのだから信用が第一と書きました。
しかし、本当に社長の右腕だったら、どこから来てもらうより、自分で育てる方が良くないですか?まずはスキル、信用はその後に構築すると覚悟を決めれば、出来ることと思います。

育てる気になれば、年齢不問で良いのでは?

例えば、50歳で入社して、5年かけて育て、10年活躍してもらう。それを繰り返していけば、社長の代替わりにも対応できます。

仮に素質だけの30歳を入社させ、育てられたらもっと余裕はあるでしょう。

職種によって年齢や性別で選別しがちですが、素質を見極め、育てるという視点を持てば、採用の自由度が増します。

加えて、自社独自の「ジョブ・ディスクリプション(職務内容記述書)」を作り、素質を見極めるノウハウ、教育をして行くノウハウを蓄積して行けば品質は向上します。

このように、採用や人材育成は、中長期で考えるものです。経営の4要素(人・物・金・情報)の筆頭なのですから当然でしょう。

また、アメリカのようにスキルが標準化されていないのですから、それこそ日本流に、「素質を見極めて育てる」という道を取るべきと私は考えます。

会社は商店じゃない。
組織を作り「会社」を作ること 採用はそのスタート地点

「求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。」こんなことの繰り返しで、ずっと]採用活動を続けている。そんなことありませんか?

「曖昧な定義で“戦力”になりそうな人を探す」より「“戦力”を定義し」、「組織を作り」、その上で「自社にマッチした考えの人を採用し」、「育て」、「戦力にする」と視点を変えてみましょう。

これすなわち経営。採用活動こそが最初に経営の力が試される場なのです。

>クソゲー採用を卒業しませんか?

クソゲー採用を卒業しませんか?

求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。こんなことの繰り返しで、ずっと採用活動を続けている中小企業が多いです。
私はこれを「採用活動のクソゲー化」と呼んでます。クソゲーとはルールや設定が酷すぎて、終わらない、つまらないゲームのこと。
今までの習慣やルールを変えて、まともな採用をしてみませんか?そう考える方はこちらまで。

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