中小企業で絶対必要なのは経理!経理部長採用の役割、スキルは?

  • 2020年10月27日
  • 2021年5月18日
  • 採用

中小企業が、もし経理部長を採用したいとしたら、どのようにしたら良いでしょうか?

第1のポイントは、中小企業の経理部長とは何?という点をはっきりさせること。大企業の経理部長に求められる仕事と、中小企業の経理部長の仕事は違いますから、重視するスキルも違います。

第2のポイントは、応募してきた人が中小企業にの経理部長として求められるスキルを持ってことを、をどう見極めるか?です。

これらのことを順に説明して行きます。

一口に経理部長と言っても役割は様々

経理部長と聞くと「お金の管理」をする人とイメージすると思います。
しかし、企業においては「お金の管理」も様々です。

一般的に「経理」というのは、仕訳をして記帳し、最終的に財務諸表を作成する業務を言います。簿記検定で出題される分野を指すと考えれば良いでしょう。

同じお金の管理でも「会計」と呼ばれる分野があります。会計には財務会計と管理会計があります。財務会計は、ほぼ「経理」と同義ですが、管理会計は、企業の会計情報を元に、経営に資する情報を作り、提供するという役割です。

さらに見て行くと、「財務」という分野もお金に纏わる分野です。こちらは、キャッシュフローや会社の方針を元に、将来の資金計画の立案と、実際の資金調達を担当します。

大企業では、これらは分担されていることもあります。
経理部長、財務部長、経営企画部長(管理会計を担当)という具合です。

一方で中小企業では、この分類も曖昧なので、経理部長の役割も曖昧なまま求人を出してしまうことがよくあります。

別の切り口では「部長」ですから、一般的にはマネジメントだけを求められる職種ですが、現実には、プレイングマネージャーというのが中小企業での「部長」に求められるスキルでしょう。この点が割と曖昧なまま採用活動を始めてしまいがちなのも中小企業ではよくある話です。

中小企業で絶対必要なのは経理

実は、多くの中小企業がお金の管理をしている目的は、税金計算のためです。
何故かと言うと、中小企業にとってお金関係で唯一法律の縛りがあるのは、法人税(それに源泉所得税)ですから、これだけは守らねばなりません。

そして、法人税申告の元となるのは、「経理」分野、すなわち日々の仕訳、記帳及び財務諸表です。

ですから「経理」部長なのだと思うのですが、実際にはこう明確に定義した上で採用しているのかな?と私は疑問を持っています。

経理だから銀行の人を斡旋してもらうは正しいか?

経理部長を採用したい。と考えたとき、中小企業の社長の多くは「銀行に聞いてみよう」と考えるのではないでしょうか?銀行側もそんな話があると飛びついて来ますよね。

しかし、中小企業の経理部長に求められるスキルが、まさしく経理スキルだとして、長らく銀行員をしていた人が、その経理スキルを持っているか?ちょっと疑問です。

言ってみれば、「銀行で簿記なんかしないだろうよ。」ということです。

「お金の管理」という広義では専門家かもしれませんか、「経理」という狭義では専門では無いでしょう。

もちろん大事なお金の管理を担う人ですから、信用できそうな人、お金の扱いに慣れている人という基準で銀行から人を斡旋してもらう。というのも分かります。
しかし、仮に経理部長として求めているものが「経理」の経験や知識であれば、スキルアンマッチになります。これは、双方にとって不幸です。

自社のニーズと戦力分析をしましょう

銀行が、自社の業務の中の何のカウンターパートナーなのか?と考えれば分かると思います。銀行出身者の得意分野は財務です。

もし経理部長として求めるスキルが財務分野の知識や経験であれば、取引銀行に顔が利くという面を含めて、ベストな選択でしょう。

でも財務の専門家に来てもらったとして、本来の経理分野はどうするのか?という点が残ります。大企業のように経理部長と財務部長を分けるというのは、仕事量やコスト面からも中小企業では現実的ではありません。

以下の順番で考えると良いと思います

(1)自社の経理部長の仕事は、「経理」なのか「財務」なのか「管理会計」なのか、はっきりさせる
(2)上記の仕事に対して、現有人員の戦力を把握し、足りないスキルの補充を考える

「現有人員の戦力を把握し、足りないスキルの補充を考える」という視点に立てば、前述した、実際にはプレイングマネージャーを求めているのに、マネージャーとして求人を出す。という間違いの防止にもなるでしょう。

経理のスキル定義はし易い

さて、長々と銀行出身者のスキルと経理スキルは別物と書いてきましたが、ここのテーマは「経理部長を採用する」ですから、以降は、「経理」のスキルのある部長さんの採用について述べたいと思います。

日本では、企業の枠を超えて業務の標準化がされていないため、職種ごとの仕事内容や必要スキルが標準化されていません。したがって、履歴書や面接ではその職種を担えるスキルを備えているか分からないことが多いです。(詳しくは「総務部長を採用したい!」参照してください)リンク

しかし、経理分野は、唯一経歴や保有資格で、スキルを判断できる分野です。

これは、前述した法人税の存在が大きいです。法人税は、課税の公平性を実現しなければならないので、企業ごとの独自の会計方法を認めておりません。そのため、結果的に企業の枠を超えて標準化が達成できています。
それに伴って、教育面でも標準化がなされており、例えば、日本商工会議所の簿記検定は、日本の資格の中では珍しく、スキルの証明には十分なり得るレベルです。

ただ、気を付けなければならにのは、標準化できており、理論も確立されているものの、企業によって微妙な違いがあることです。中には理論的な背景があまりなく、所属した企業の方法しか知らないという人がいます。
これは、理論をあまり勉強しないという点も含めて、敬遠した方が良いケースです。

実力というのは、理論と実践経験の相互作用によって培われるものですから、以下の二つを見た方が、間違える可能性は低くなるでしょう。

  • 実務経験(実践経験)
  • 保有資格(裏付となる理論の理解度)

部長としての役割は?

今まで、主として「経理」のスキルについて書いてきましたが、「部長」の役割はどうでしょう?

一般的な「部長」の役割は次の通りでしょう。

  • チームマネジメント
  • 部下育成
  • 業務プロセス改善

この中で忘れがちですが、最重要と言えるスキルは「業務プロセス改善」です。

昨今は、中小企業と言えどもIT化が必須です。
経理分野はIT化が進んでいる分野ですが、中小企業の中にはまだまだという所も多いです。

IT化を進める時、その前段階で必要なのは「業務の標準化」です。
経理は標準化が進んだ分野と書きましたが、個々の業務プロセスを見ると、会社ごとの独自なやり方もあり、その中には不合理な処理も多々あります。

採用の局面では、「ITの実務経験」や「エクセルを使えるか」という点を気にしがちですが、そのような手を動かすことは若手の部下にさせれば良いこと。
本当に大事なのは、自社の業務全体を再設計し、標準化をする。言うなれば業務全体のグランドデザインをする能力です。

幹部として役割

経理部長ですから、中小企業においては、その会社の幹部の一人となるでしょう。
その役割にはどんなものがあるでしょうか?集約すると以下の二点でしょう。

  • 社長の補佐
  • 会社のビジョンや方針に基づき、事業を推進する

会社そのものの発展に関わることですから、社長の考えや、会社のビジョンを理解し、共感できるか?というのが最低限のポイントです。

専門知識

前途した通り、会社によっては以下の知識やスキルが求められます。

  • 税務
  • 管理会計
  • 財務

採用に向けて何をするか

ここまで、最初に書いた、第1のポイント「中小企業の経理部長とは何?」に焦点を当てて、採用する人材像を述べて明してきました。

ここからは、いよいよ具体論です。
第2のポイント「応募してきた人が中小企業にの経理部長として求められるスキルを持ってことを、をどう見極めるか?」を含めた、実際に経理部長を採用するために何をすればいいのか?
を述べたいと思います。

自社にニーズを明確に

まず復習として、前項までで述べたことを表1にまとめました。
一口に「経理部長」と言っても様々な役割や要求されるスキルがあります。この表では、上に行くほど高い能力(給料も高い)と考えてください。

表1.経理部長として求められる役割・スキル・知識これを全て兼ね備えた人は少ないし、仮にそんな人が入社しても、自社の業務から見てオーバースペックだとしたら、双方不幸になります。
また、マネジメントは長けているが、経理は分からない。財務は詳しいが経理は知らない。という人は中小企業の経理部長は勤まらないと考えた方が良いです。

以上の点から、自社のニーズの検討は必須となります。
検討のポイントを表2にしました。

表2.経理部長採用に当たっての検討のポイント

繰り返しになりますが、中小企業の経理は、税法に則った経理が基本になりますから、経理の知識やスキルをベースに考え、マネジメントなどの「部長」の役割、社長の補佐や事業の推進など「幹部」の役割、管理会計や財務の知識やスキルは、自社にそのニーズがあるかを見極める必要があります。

例えば、社長がワンマンで部長に権限移譲をしていないのであれば、その是非は置いておいて、「部長としての役割」や「幹部としての役割」はあまり求めておらず、「経理としてのスキル」が主に求められるものでしょう。これは「経理」であって「経理部長」ではありませんが、現実にこのような会社が多くあます。

その一方で、「経理部長」に応募してくる人は、普通は「部長としての役割」とそれに伴う権限があると考えるし、「幹部として経営に参画できる」と考えるので、入社後双方で「違った」という話になります。

また、銀行から人をもらう例で述べた通り、銀行員は「財務」の知識はありますし、「部長としての役割」も担えると思いますが、「経理」は比較的弱いので、経理業務を中心としたプレイングマネージャーとしての「経理部長」には向いていないと言えます。
こちらも入社後双方で「違った」という話になります。

必要スキルを決める

自社のニーズが明確になったら、必要スキルを割り出します。
再び表2を見て頂ければ、大体は分かるでしょう。

ニーズの中に「チームマネジメント」があったとしても、マネジメントが得意な社長であれば、経理部長のマネジメント力の優先順位は低くなるでしょう。逆であれば当然高くなります。

どんな会社でも「経理としての必須知識」は無ければ困るし、前述の通り「業務プロセス改善」の能力も必要ですので、この能力をベースに、何を求めるか?を考えましょう。

年収を決める

「必要スキル」さえ決まれば、募集時の年収を決めるのは比較的簡単です。
「必要スキル」を表にして、「部長」という肩書や年齢など伏せた上で、就職斡旋業者などに聞けば、世間相場が分かります。

仕事の内容と必要なスキル、年収を決めれば、あとは求人を出すだけです。

どうやってスキルを見極めるか

ここからが、第2のポイント「応募してきた人が中小企業にの経理部長として求められるスキルを持ってことを、をどう見極めるか?」です。

「経理としての必須スキル」は、前述の通り実務経験(実践経験)と保有資格(裏付となる理論の理解度)で判断できます。
「専門知識」も実務ですから同様です。

問題は、「業務プロセス改善」の経験や能力の見極めです。
まず、この分野を分かっている人は意外と少ない。というのが私の印象です。それもあって見極めが難しいです。

私が提唱しているのは、以下の方法です。

・自社で不合理と考えている業務プロセスや、過去の改善した業務プロセスをデフォルメして問題とする
・上記の改善策とその理由を、文章として出してもらう

双方とも少々面倒ですが、これをやることで、「業務プロセス改善」の能力を見極めることは可能と考えています。
詳しく知りたい方は、以下を参照してください。

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面接では「部長としての役割」に集中する

前述の通り、実務のスキルや知識は、履歴書や職務経歴書を見れば凡そ分かるので、面接では、まず「部長としての役割」を担えるスキルや経験を聞き出すことに集中しましょう。

例えば、以下の質問をすると良いでしょう。

  • チームマネジメント・部下育成・社長の補佐としてのエピソードを説明してもらう
  • チームマネジメント・部下育成・社長の補佐に対して、どのような考え、姿勢でいるか説明してもらう

この分野は、実際に経験したこと、自分自身の考え方を言語で表現してもらうことで、凡そ分かるものです。
通り一遍の説明しかできない、教科書的な受け答えしかできない。というのはこのクラスの採用では論外です。

逆に、経験や考え方を表現してもらうことで、自社から見てオーバースペックな人材か?という点も分かるでしょう。

逆面接のつもりでビジョンを説明する

「幹部としての役割」を担うポイントは「社長の考えや、会社のビジョンを理解し、共感できるか?」です。

まずは社長自身の考えや会社のビジョン、それを策定した背景を逆に面接されるくらいの気持ちで説明しましょう。

立場を逆転させた面接ですから、面接とは逆に考えるようにしてください。
すなわち、自社の考え方を言語で表現することで、相手も凡そ分かるもの。
通り一遍の説明しかできない、教科書的な説明しかできない。というのはこのクラスの採用では論外。を肝に銘じて説明しましょう。

有能な人であれば、この部分を聞くだけで、自分に合う会社かどうか判断してくれるでしょう。

最後に、自社のビジョンに対する、意見や感想を聞けば、面接云々以前に、新たな発見があるかもしれません。

最後に

ここまで、採用プロセスを書きました。

実際にやるとなると、かなり大変な作業ですが、経営の4要素、人・物・金・情報の最初で出てくる「人」のことですから、採用こそが経営者が一番力を入れるべき事であるということをご理解ください。

会社は商店じゃない。
組織を作り「会社」を作ること 採用はそのスタート地点

「求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。」こんなことの繰り返しで、ずっと]採用活動を続けている。そんなことありませんか?

「曖昧な定義で“戦力”になりそうな人を探す」より「“戦力”を定義し」、「組織を作り」、その上で「自社にマッチした考えの人を採用し」、「育て」、「戦力にする」と視点を変えてみましょう。

これすなわち経営。採用活動こそが最初に経営の力が試される場なのです。

>クソゲー採用を卒業しませんか?

クソゲー採用を卒業しませんか?

求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。こんなことの繰り返しで、ずっと採用活動を続けている中小企業が多いです。
私はこれを「採用活動のクソゲー化」と呼んでます。クソゲーとはルールや設定が酷すぎて、終わらない、つまらないゲームのこと。
今までの習慣やルールを変えて、まともな採用をしてみませんか?そう考える方はこちらまで。

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