中小企業で人事部長を採用したい!必要なスキル、素質は?

  • 2020年10月31日
  • 2021年5月18日
  • 採用

もし人事部長を採用したいとしたら、どうやったら良いでしょうか?いろいろ考えて行きたいと思います。

なお、文中に「スキル」や「能力」、「素質」などが出てきますが、この文では以下の通り定義します。

「スキル」:経験や学習により身に付けた能力(広義)と定義します。
「能力」(狭義):その人が元々持っていた能力(広義)と定義します。文中では、特に断りのない限り「能力」とは狭義の能力を指します。
「素質」:その人が潜在的に持っている能力(広義)と定義します。

人事部長の仕事は?

中小企業では人事部を置いているところは少なく、大抵は総務部か社長自ら担っているかと思います。

そんな人事部長(あるいは人事担当)の仕事は、次のようなものです。

  • 従業員の採用
  • 従業員の教育
  • 人事制度、評価制度の設計と運用
  • 従業員の退職処理
  • メンタルヘルスを含む病気や労災の対応

人事ですから「人」絡み全部。そんな人を採用するのは、まぁ大変です。

人事に求められるスキル

何と言っての労働法規を理解していることが大事です。特に労働基準法については深い洞察が必要です。

とかく法律を知るというと、その字面と解釈に偏りがちですが、そうではなくて「そもそも労働基準法は、何を守るために作られたものか?」という認識と、労働基準法の条文は、その目的達成に寄与しているのか?という視点が重要と私は思います。時代の変化とともに役割を終え、むしろ害のある法律、条文なんて山ほどありますから。

人事の仕事は、そのほとんどが労働基準法に関わってきますから、このスキルが唯一絶対と言っていいほど、必要です。

しかし、大手企業を含む多くの人事部長も、人事を担っている総務部長も、社長でさえも、ここまで深く知っている人は少ないでしょう。本来、社長は人事を担っていなくても知っておくべき分野だと思いますが。

人事に求められる能力

労働基準法に対する深い洞察があるに越したことは無いですが、前述の通り、そんな人は珍しい。
多くに人は、そんな深い思考がなくても、実務はやれています。これは言ってみればプロとセミプロの違いでしょう。

しかし、仮にセミプロでも、次の点は欠かせないところです。

(1)自分の会社の理念・ビジョン・目的・目標・方針・戦略・戦術を熟知していること
(2)(1)に完全に同意し共感ていること
(3)(1)を自分の言葉で説明できること

要は自社の事を理解する。それに完全同意できるよう努力する(修正を促したり、優先順位を付けて妥協するなど)。他人に説明できる。という3つの能力が必要です。

例えば、採用するという場面で想像してみてください。

自分の会社の理念・ビジョン・目的・目標・方針・戦略・戦術を熟知していなければ、どのような人材が必要か?が分かりません。

自分の会社の理念・ビジョン・目的・目標・方針・戦略・戦術に完全に同意できていない、共感できていなければ、自分が納得していない会社に他人を入社させることになるので、よっぽどの悪人でない限り罪悪感に苛まれます。普通は採用活動に身が入りません。

自分の会社の理念・ビジョン・目的・目標・方針・戦略・戦術を自分の言葉で説明できなければ、他人には伝わらないでしょう。自社にマッチする人材を逃してしまいます。

これは、採用だけではなく、人と会社に関わる人事部長にはは絶対必要なこと。
教育カリキュラムを作る、評価制度を作る、そしてこんなことは無いに越したことはないですが、従業員を解雇する場合でも必要です。

ですから、理解力、同意できるまで努力する力、説明できる力の3つは人事部長には必要不可欠の能力となります。

また、人事部長の相手は人(主として従業員)なので、人に対する洞察や、寛容さも持ち合わせていなけらば勤まりません。その意味でも人生経験が豊富な人というイメージが一般的です。

そんな人事部長を採用するには?

言うまでもなく、その時点での採用主体者が、前述の3つの能力を持っている必要があります。

(1)自分の会社の理念・ビジョン・目的・目標・方針・戦略・戦術を熟知していること
(2)(1)に完全に同意し共感していること
(3)(1)を自分の言葉で説明できること

普通に考えると、この段階の採用主体者は経営陣の一人でしょうから、これは「自分の会社の理念・ビジョン・目的・目標・方針・戦略・戦術を策定しているか?」と変換されるでしょう。

自分の会社の理念・ビジョン・目的・目標・方針・戦略・戦術がしっかり策定されていれば、自分(たち)で作ったものなので、同意も共感も出来ているだろうし、自分の言葉で説明することは容易でしょう。

結局のところ、人事部長を採用できるか否かは、しっかり経営をしているか?と問われるということです。

「自分の会社の理念・ビジョン・目的・目標・方針・戦略・戦術」が明確化され、そのビジョンや戦略から考えての、人事部長を採用という結論であれば、自信を持って採用活動を始めましょう。
それ以外の会社は止めた方が良いと思います。

それでも人事部長を採用したいときは

それでも、どうしても人事部長を採用したい。というのであれば、以下の方法をお勧めです。

①求人の仕方はどのような形でも構いませんが、広告を出す、あるいは紹介を頼むであれば、以下を明確にしましょう

  • 採用を始め、人事関係を強化したいこと
  • 上記を達成するためには、理念やビジョン、各種戦略が必要だか、自社ではまだそれがはっきりしていないこと
  • だから、理念他を一緒に明文化するところから一緒にやって欲しいこと

普通の会社の通り一遍の「幹部募集」より具体的です。
自社の出来ていない点を正直に伝え、そこの明文化から一緒にやりたい。と伝えれば興味を持つ人もいると思います。

②自社の社風に適合する人を見つける工夫をする

③理念やビジョン、各種戦略を一緒に作る

以下、②、③について詳しく説明します。

自社の社風に適合する人を見つける工夫をする

まずは自社はどんな会社なのか?ということをイメージしましょう。これはきっちりしていなくても構いません。
私のお勧めは、今いる社員を見ることです。

どの会社でも、その会社のその分野の第一人者っていますよね?

また、どの会社でも苦労したな。というエピソードはありますよね?例えばトラブルを乗り越えたとか。

そして大抵は、この第一人者とかエースと呼ばれる人か、経営者がその苦労を乗り越えていますよね?

その「どうやって乗り越えたか」は、例え明文化されていなくても、皆さんの共通認識になっていますよね?

「自分たちは、危機に直面したとき、それをどうやって乗り越えたか?」これこそが自社はどんな会社なのか?が凝縮されたエキスです。
まずは、こういうエピソードを思い出してみましょう。

文化に適合しそうな人を見つけ出すために独自の問題を作る

思い出したエピソードを多少デフォルメして、問題を作成してみましょう。「こういう状況になったとき、あなたはどのような対処をしますか?」という感じ。

そして求人に応募してきた人に、事前課題として出してみる。
解答は文章で出してもらうのが良いでしょう。

出題するには多少コツが必要ですし、トンチンカンな回答も多くなると思います。
でも中には、自分たちの思考と同じプロセスで解決しようとする人や、「こんな方法があったか!」と感心させられる回答もあるでしょう。
そして、こういう人こそ自社に合う人材でしょう。

人事部長に限らず、人を採用して一番苦労するのは、「価値観が全く違う」や「理解力がない」という人に、教えるこではないですか?
この設問は、「価値観が一致するか」「理解力があるか」それと、「自分の言葉で伝えることができるか」を見ているのです。

理念から一緒に作って行く

前段で、「人事に求められる能力」として以下の3点を挙げました。

(1)自分の会社の理念・ビジョン・目的・目標・方針・戦略・戦術を熟知していること
(2)(1)に完全に同意し共感ていること
(3)(1)を自分の言葉で説明できること

そもそも自社では、まだ「理念・ビジョン・目的・目標・方針・戦略・戦術」が明文化されていないのだから、そこから一緒にやることで、熟知及び同意と共感はクリアできるでしょう。

それを自分の言葉で説明できるかどうかは、採用時の課題で確認できているので、大丈夫でしょう。

本当は必要なこと

理念以下を明確化するという作業は、実際やるとなると、かなり大変だと思います。

しかし、人事部長の採用に限らず、自分の会社はそもそもどのような会社なのか?、どこに向かおうとしているのか?、その為に今何をしようとしているのか?
ということを理解し、共感できる人と一緒に仕事したいですよね?

人事部長、総務部長、経理部長など管理系の幹部社員(候補を含む)を採用する場合でも、一般社員を採用する場合でも、良い採用をし、良い会社に育てるためには、必要なことです。

素質を見極めて育てる

今回紹介した採用プロセスは、以前書いたものを応用しました。

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どんなに一生懸命採用をしても、完全にマッチする人が現れるわけありません。

だから、その人の考え方や仕事のセンスが自社と合うか否か?という点に着目して採用し、スキルの足りない点は育てる、自ら育ってもらう。という考えで作ったものです。
皆さんもそういう視点に変換しては如何でしょうか?

その具体的な方法はこちらを参照ください。

育てる気になれば、年齢不問で良いのでは?

例えば、50歳で入社して、5年かけて育て、10年活躍してもらう。それを繰り返していけば、社長の代替わりにも対応できます。

仮に素質だけの30歳を入社させ、育てられたらもっと余裕はあるでしょう。

職種によって年齢や性別で選別しがちですが、素質を見極め、育てるという視点を持てば、採用の自由度が増します。

このように、採用や人材育成は、中長期で考えるものです。
経営の4要素(人・物・金・情報)と言いますが、物や金に対して、人や情報はおざなりになる中小企業経営者が多いです。
でも、人は経営の4要素の筆頭なのですから、最も力を注ぐべきでしょう。

会社は商店じゃない。
組織を作り「会社」を作ること 採用はそのスタート地点

「求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。」こんなことの繰り返しで、ずっと]採用活動を続けている。そんなことありませんか?

「曖昧な定義で“戦力”になりそうな人を探す」より「“戦力”を定義し」、「組織を作り」、その上で「自社にマッチした考えの人を採用し」、「育て」、「戦力にする」と視点を変えてみましょう。

これすなわち経営。採用活動こそが最初に経営の力が試される場なのです。