中小企業の戦略・戦術には系統図がマッチしているかも

随分前に、ある人から戦略から戦術の検討、そしてそれを日常の活動に落とし込むには、「系統図」がいいよ!なんて言われたことがあって、それから考えに行き詰まると使うようにしています。
やり方は簡単で、目的に対して手段を羅列していく。その手段を実現するためのもっと下位手段を羅列していく。というのを繰り返せば、「日常的にはこれやればいいのね」という手段が分かる。というもの。加えて大雑把で良いので、戦略家でもなければ戦術家でもない、単なる素人の私には、いい感じのツールです。

最近の2回ほどブログで「自分がマネジメントをする立場になったとき、戦略や戦術を考え、実行してみた」ということを書いています。(確か以下の2つです)
今回それを紹介がてら、「系統図」を作ってみたい思います。

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繰り返しますが、私はプロの戦略家でも無いし、マーケティングなども本で読んだ程度の知識しかありませんので、私が考え実践したことは、戦略・戦術というレベルではないということは承知しています。

少々恥ずかしのですが、昔のことだからまぁいいか。というノリで、私がマネージャーになって、自社の新規ビジネスを立ち上げる時、考え実践したことを紹介します。
なお、これは私の退職(2015年)後、私が居た会社があまりにもグダグダになってるのを憂いて、2016年に昔の仲間向けに「低レベルだけど参考にしてもらえば今よりマシになるでしょ」と思って書いたものをベースに再構成したものです。
元々仲間内のものだったので、個人名や会社名がそのままだったのですが、そこを以下の通りにします。

Aさん:私が尊敬していた上司
B社:私が所属していたIT企業
C社:大口の派遣先企業(大手電機メーカのIT子会社)
D社:大口の派遣先企業(ユーザ企業)

脱下請ビジネスの確立から地方活性化へ

前提として、脱下請(脱人材派遣)ビジネスの確立が第一であり、そこに注力する。ここで成功すれば、そのノウハウを展開することで、地方活性化の取組みに繋がると言うのを原則としました。

首都圏でのビジネスの成功がなければ、各人が地元に戻ってビジネスが出来ないのは明白。逆に言えば、首都圏でビジネスを考える時に将来地方に戻る事も視野に入れたものにするということです。

顧客と対等になる

B社が掲げている理念やそれに基づく施策の実現するには、まずC社やD社に依存している状態を解消することが必要です。結局この状態は、ある程度までは彼らに庇護してもらうのと引き換えに、彼らの都合に合わせて「何でもします」ということですから、理念の実現はおろか自立さえも覚束ない状態。

自分たちでこれを「下請」と定義し、その状態から脱却すべきというのが、当時の共通認識でした。この下請脱却というのはB社の長年の悲願だったと思います。なお、下請と言っても業態の下請ではなくマインドですから、要は顧客と対等に、ビジネスパートナーとしてお付き合いできる関係を築くこと。具体的には、「(自分たちにとって)理不尽な要求は断れる」関係を築くことになります。
これを系統図風に表現すると以下の感じです。(以降< >で括ったものは系統図風な表現例とします)

<(目標)理念実現←(手段)顧客と対等になること>

顧客と対等になるとは?

顧客と対等になるということは、顧客から一目置かれること。そしてB社に一目置いている顧客を沢山作ることです。一目置かれることで、普段から対等にお付き合いできるでしょう。相手に一方的に依存している状態では対等なんてあり得ません。基本は相互依存。相互依存状態になるためには、相手に認められる何かが必要です。

一目置いている顧客を沢山作るというのは、イザというときの保険のようなものです。何かの事情で、ある顧客と取引を止めることになっても、他に顧客が沢山いるから大丈夫という状態を作ることで、対等状態を保てます。取引を止めると言われて、泣いてすがる状態ではとても対等とは言えません。

<(目標)顧客と対等になること←(手段)顧客から一目置かれること。そういう顧客を沢山作ること>

顧客と対等となるための施策

顧客と対等になるために、私は二つの施策を考えました。

  1. 中小企業を相手にすること。相手もほどほどの大きさの企業であれば、対等に付き合いやすいだろう。また、業種は製造業に絞る。基本的には真面目な業界と思えたので。
  2. 顧客の潜在課題を抽出し、解決策を提案できるようになることで、「B社は頼りになるな」という関係になる。「頼りになる」存在であれば、対等な立場に近付ける。
  3. 上記の「B社は頼りになるな」というのは、派遣でも可能。派遣という形で顧客の中に入り込んでいるのだから、顧客の潜在課題を発見するチャンスは大きいはず。

<(目標)顧客と対等になること←(手段)対等になり易い(仮説)中小製造業に絞り活動すること>
<(目標)顧客と対等になること←(手段)顧客の潜在課題を解決し「頼りになる」存在になる>

差別化

ということで製造業を中心に多数の小口顧客を持つというのを当座の目標としました。ただ一言に多数の小口顧客を持つと言っても、そう簡単ではないでしょう。特にB社は営業が下手ですから、普通の営業で多数の顧客を持つのは難しいです。

顧客と対等になるには、何等かの理由でこの会社でなきゃダメだ。という所を持つ必要があります。要は強みってやつです。それが商品なのか技術なのかブランドイメージなのか、その企業ごとで違うでしょうが、この強みを前面に押し出して他社と違いを鮮明にする、いわゆる差別化戦略ですが、どの会社もこれを必死にやっています。

私は、他社との差別化戦略として、B社の強みである社風を前面に出すとうことに決めました。これしか思いつかなかったのもありますが、これこそがAさんがずっとこだわり続けてきたところですから、本物であり嘘がないこと。また、社風を強みにするなんて普通の会社は考えないだろうから、差別化にはうってつけと考えたことなどが理由です。

こうして、他社との違いを鮮明して、一目置かれるようにするために、中小製造業の集まりに顔を出してはPRして歩き、フェイスブックなどを使って繋がりを強化しつつ、B社のPRをして認識の定着を図りました。テレビの取材もAさんの本もすべてこの活動の一環です(当の本人がそのことを分か
っていないので、散々我儘こかれて時機を逸したりしましたけど)。いわゆるブランディング・マーケティング活動です。

<(目標)顧客から一目置かれること←(手段)他社との違いを探し、それを前面に出すと決めて、認知してもらう活動をすること>

顧客の拡大

地道なマーケティングを続け、B社の認知度が上がって行く同時に、営業行為へ移行する。出向くのはB社らしい真面目で人のいい、営業も上手くできない社員(そういう方向でマーケティングしているので、その方が信頼されるので)。そういう体制を築きました。

また、営業ツールとして「パソコンの不具合を早期発見できるツール」を開発してもらい、派遣ビジネスのように顧客の中に入り込む仕込みとして使うようにしました(これは、コピー屋さんのカウンター確認をモデルにしています)。

この最終的な狙いは、もちろん「顧客の潜在課題を抽出し、解決を提案できるようになること」で、「頼りになる」存在になることです。

<(目標)マーケティング活動を営業に繋げる←(手段)B社らしい社員が営業に行くことで信頼を得る>
<(目標)最終的には顧客の潜在課題を抽出し、解決を提案できるようになること←(手段)「パソコンの不具合を早期発見できるツール」を使い顧客の中に入り込む(モデルはコピー屋さんのカウンター確認)>

顧客の潜在課題の発見と解決する能力向上のための

と、ここまで仕込んだのですが、最終形の「顧客の潜在課題を抽出し、解決を提案できるようになること」というのはすごく難しいので、最初はD社への派遣部門、次いで自主受注部門を対象に、そのための教育を知合いのコンサルタントにお願いしました。D社を先行させたのは、派遣の方は既に関係が出来ているからでした。
なぜこのコンサルタントに頼んだかというと、私の考えに理解を示してくれたこと、ソリューション営業の理論に精通していたこと(知合いのコンサルタントと話すまで知らなかったのですが、私の考えていた「顧客の潜在課題を抽出し、解決を提案できるようになること」というのはソリューション営業と言います)、製造業に精通していた。以上3点です。

<(目標)顧客の潜在課題を抽出し、解決を提案できるようになること←(手段)専門家に教育をしてもらう>

以上が私が行ったことの概略です(これで結果が出た!となれば言う事ないのですが、結果が出る前に退職してしまったので。。。)。これを系統図という形で整理すると、以下の通りですかね。右端に今やるべき具体的行動です。
こうすれば、行動に落とせます。あとはそれをやるだけ。最初は粗い内容ですが、行動すれば抜けが見えてきますので、順次改訂していけば、精度が上がります。

難しい理屈を知らなくても簡単に作れるし、簡単だからこそ行動に時間が割ける。という点が気に入ってます。

会社は商店じゃない。
組織を作り「会社」を作ること 採用はそのスタート地点

「求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。」こんなことの繰り返しで、ずっと]採用活動を続けている。そんなことありませんか?

「曖昧な定義で“戦力”になりそうな人を探す」より「“戦力”を定義し」、「組織を作り」、その上で「自社にマッチした考えの人を採用し」、「育て」、「戦力にする」と視点を変えてみましょう。

これすなわち経営。採用活動こそが最初に経営の力が試される場なのです。