完璧を求めないマネジメントスタイル

私が、新卒から29年間勤めた会社、入社当初は酷いものだったのですが、3年目に入社して来た上司は素晴らしい人でした。

後年その人とちょっとトラブルになりまして、今はもう会うことも無いのですが、若かった自分にとっては、大いに刺激を受け、成長させてもらった存在。
ある時期までは、自分にとって理想の上司でした。

ここのブログは、企業の採用や教育を考えて行こうというのがテーマですので、過去私が部下として経験したマネジメントや経営手法を紹介したいと思います。

今回は、以前ご紹介した、「自分で考える『教育』」と対になる「完璧を求めないマネジメント(本人は「70%経営」と呼んでました)」についてです。

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「自分で考える」と「完璧な成果」は真逆

「自分で考える教育」の詳細はリンク先を見ていただくとして、ここでは簡単に説明します。
仕事の遂行に当たっては、まず「自己責任」であり、「目的理解」の上「方法は自分で考える」を徹底します。
したがって、「マニュアル通りやりました」「上司の言う通りやりました」というのはNG。受けた以上は自分の責任となります。

ここの会社ではこれを教育方針としていましたので、若手だろうがベテランだろうが関係ない。そうなると、まぁいろいろやらかす訳です。

場合によっては、上司はその後始末に奔走することになります。

普通の会社は、上司が後始末に奔走するのは単なる無駄と捉えるでしょうから、そんなミスはしないように、完璧な成果を求めるはずです。
文字で書くと分かり難いかもしれませんが、普通とは真逆のことをやろうとしているのです。

「完璧な成果」を出すには120%を狙わなけれなならない

上述の通り、普通の会社は何ごとも完璧を目指すはずです。しかし完璧な人間なんていないし、完璧な組織もありません。仮に完璧に近いくらい優れた人がいたとしても、不得意分野があるはずなので、全てにおいて完璧というのはあり得ません。

そういう前提の元で、完璧を目指すとなると、どうなるか?

「100点では足りず、120点を目指す。」

何等かのミスがあっても100点が取れるように、120点を取るような仕組みを作るのです。

いわゆる「念のため」に始まり「過剰なチェック」「徹底したマニュアル化」「上司のマイクロマネジメント」「出来ないときの罰則」「会議のための会議」などです。

実はそれでも完璧は達成できないのですが。

もちろん100点を目指すが、結果70点でも良しとする

繰り返しますが、件の上司は普通とは真逆を考えました。その背景には以下の認識があります。

  1. そもそも完璧などあり得ない。失敗はつきものである
  2. そして、人は失敗を通じてしか育たない
  3. さらに、他責では失敗が教訓にならない

もちろん、成果は悪いより良いに決まってますから、100点は目指します。でも結果それが70点(まぁ合格点)でも良しとする。むしろ取れなかった30点に次の成長余地があると考えるのです。

これにより、人の成長を促しながら、そもそも出来ないことに向ける20%の努力を削減する。昨今、日本企業の生産性というのが話題になりますが、それにも通じる考えです。

この考えに至った上司は、一種の天才だったと今でも思います。

限界点

以上、いい事尽くめのように見えますが、人間の営みなので限界点もあります。

標準化できない

ひとことで言うと、70点ってどこ?というのが分かり難く、人によって認識がまちまちということです。
組織が大きくなってきて、マネジメントする人が増えてくるに従い、それぞれの認識に差がでてきて、有名無実化しました。

我慢できなくなる

上記と似たような話ですが、誰でも、失敗は嫌なものです。本人は失敗すれば落ち込む。引きずる。さらに、人によっては、自責原則を忘れ、他人に責任転嫁してしいます。こうなると周囲とギクシャクし始める。これも辛い。
一方、マネージャーも後処理に奔走するのは嫌なもの。いつ一人前になるのか?というゴールも見えず、ストレスは溜まります。
結局、双方我慢できなくなりました。

これらの動きに対し、会社組織として、早期発見、早期対応が出来き、さらに我慢強く人の成長を待てるのであれば、理想的な方法論であると思います。

何ごともそうですが、作ることより運用して定着させるのが大変ということですね。

会社は商店じゃない。
組織を作り「会社」を作ること 採用はそのスタート地点

「求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。」こんなことの繰り返しで、ずっと]採用活動を続けている。そんなことありませんか?

「曖昧な定義で“戦力”になりそうな人を探す」より「“戦力”を定義し」、「組織を作り」、その上で「自社にマッチした考えの人を採用し」、「育て」、「戦力にする」と視点を変えてみましょう。

これすなわち経営。採用活動こそが最初に経営の力が試される場なのです。