採用活動に必須!「経営計画」の立て方

  • 2021年10月18日
  • 2021年10月12日
  • 採用

前回「採用活動には経営計画が必要な理由とは?」というタイトルで書きました。

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こちらでは、採用を成功させるには、経営計画が必須であることを説明しましたが、これは、買物で考えると分かり易いと思います。

そもそもどのようなものが欲しいのかを定義しなければ、買物など出来ないでしょう。たまに衝動買いするというケースもあるでしょうが、大方早々にゴミになるだけですよね。

同様に、人の採用をするときにも「当社にはどのような人が必要か?」を定義しなければ、失敗します。

しかし、現実には、その定義がないまま、衝動的に採用してしまうことも多いようです。「面接したら目がキラキラ輝いていた」なんて理由で採用する会社は割とあるのですが、そんな理由で採用しても、本当のニーズに合わない。。。

というのは当り前と思うのですが。。。

で、「当社にはどのような人が必要か?」という問いは、会社の経営の方向性から出てくるものです。そして、会社は、その能力も思いもバラバラな社員に、その方向性を理解してもらわなくてはなりません。そのためのツールが、「経営計画」なのです。

だから「経営計画」を見れば、大抵はその会社の方向性が分かますし、「当社にはどのような人が必要か?」という問いの答えが出てくるのです。

このことから私は「採用活動には経営計画が必要」と言っています。

では、「経営計画」はどのように立てたら良いか? 今日はこのことについてです。

なお、私が書くのは、あくまでも採用活動を上手に行うためという視点を中心としたものになります。

実際に「経営計画」を立案する場合は、書籍や他のサイトも参照してください。「経営計画の立て方」で検索すれば、参考情報は山ほど出てきますので。

将来の自社ビジネスを想像する

何年後でも構わないですが、一応計画ですから、1年では短すぎますので最低でも3年以上を想像した方が良いでしょう。
ここでは10年後として話を進めます。

10年後の自社ビジネスを想像するためには、以下のようなアプローチが良いでしょう。

自社の今を確認する

どんな会社でも得意・不得意があります。自社の将来を考えるとき、得意分野を伸ばして行った方が成功確率は高くなるでしょう。一方で不得意分野を克服するという逆張りもありだと思います。

いずれにしても、得意・不得意、強み・弱みを把握しておくに越したことはありません。

この分野で最もポピュラーなのは、SWOT分析です。会社の強み・弱みなどの内部要因と、機会・脅威などの外部要因をマトリックス形式で表すものです。

やり方は、SWOT分析で検索すれば沢山出てきますのでそちらを参照してください。

なお、私もSWOT分析については、以下のようなことも書いております。
テーマが会社とはかけ離れていますが、割と分かり易いかと思っていますので、ご覧いただければと思います。

「クラスター戦略をSWOTで考えてみた」
「クラスター戦略をSWOTで考えてみた(2)」

ただし、SWOT分析は、「今」に焦点を当てているので、将来を想像するには不足している点があります。今の機会・脅威が必ずしも10年後と同じとは限りませんので、その点は留意してください。

とは言え、今の機会・脅威を知る事は大事ですので、試してみて損はありません。

世の中の方向性を想像する

前項で書いたと通り、「今の機会・脅威は10年後と同じとは限りません」ので、10年後の世の中がどうなるか? ということを想像しましょう。

こちらも一般的な方法として、PEST分析を紹介します。
こちらもやり方は、検索すれば沢山出てきますので、そちらを参照してください。

簡単に説明すると、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4分野に分けて情報を集めて、将来を想像してみましょう。ということです。

10年後の自社ビジネスを想像する

(1)「自分たちの今を確認」し(2)「世の中の方向性を想像」し、それを踏まえて、いよいよ「では、自社の10年後のビジネスはどうなるか?」を想像する段階に入ります。

以下のような切り口で考えて行くと良いでしょう。

今やっているビジネスから想像する

ここでの思考は、「今やっているビジネスや持っている技術がどう変化して行くか?」という思考です。今まで自分たちがやっていた業界ですから、どう変化するかは想像し易いというのが良い点です。

この思考で問題なのは、「今やっていることは将来も続く」という幻想を抱いて、それに立脚してしまうことです。
中には稀に何十年も続くビジネス形態はあるのですが、普通は今と全く同じビジネスは、長くても30年程度、普通は10年程度しか続かなないと考えた方が良いです。

「今やっているビジネスや持っている技術がどう『変化』して行くか?」の「変化」が重要だということを忘れないことがポイントになります。

全く新しいビジネスを想像する

例えば今までBtoBビジネス中心だった会社が、BtoCビジネスに打って出るというのは、楽しい想像です。
会社とは「かくあるべき」という思いを持っている経営者も沢山いることでしょう。

しかし、前述の「今やっているビジネスから想像する」に比べると、「新しいビジネスを想像する」というのは遥かに難しい事ですから、途中で挫折することも多いです。
実は挫折したと認識しているのはまだマシで、単なる夢物語を語るだけで一向に進まない。そしていつの間にかプラン自体が消滅しているという会社の方が多いのが現実です。
ここはこの方法の欠点として留意しておいた方が良いでしょう。

「新しいビジネスを想像する」アプローチとしては以下の二つがあります。

保有技術の横展開

考えやすいのが、今自分たちが保有している技術を他の市場で生かせないか?と考えることです。

新しい技術で全く新しい市場を目指す

現在の保有技術から思考して行くのではなく、外部の要因から想像して行くパターンです。前者に比べ難易度は高いです。

ビジネス形態を想像する

ここまではどのようなビジネスをするか? という視点で見てきましたが、もう一つ違う視点、ビジネスの形態も検討しましょう。

大雑把に分けると、「下請け」ビジネスか? 「自立した」ビジネスか? の二つになるでしょう。

下請けで行くのか

誰でも「ど下請け」は脱却したいでしょう?

具体的には、業態は下請けとしても、納期や価格で相手と対等以上の関係になりたいはずです。「ど下請」の一番嫌な点は、生殺与奪の権を相手に握られていることですから。

対等以上の関係になるには、自社でなければダメという点を見出す必要があります。それは技術なのか? 製品なのか? 対応力なのか? あくまでも「下請け」で生きていくのであれば、それを決めることが肝要です。

自立したビジネスを志向するのか

下請けビジネスの旨味は、マーケティングなど余計な活動を少なくできること(皆無ではない)です。
ですから、それからの脱却を志向するのであれば、今までやったこともなかった、マーケティングや営業戦略を立案しなければならないです。
しかし、今まで下請けで成長してきた会社には、それが出来る人材はいないのが普通です。

自立したビジネスを志向する場合、この点が一番のネックであるにも関わらず気付いていないということが多いです。

また、結構な割合で、「本音は下請志向」なのに、「自立ビジネス」を標ぼうする会社がありますが、それは間違いの元です。

マーケティングや営業のノウハウを知らないで自立したビジネスなんてあり得ないのです。「良い商品を作れば売れる」は実は、下請業態の発想です。

ここが最も難しいことという認識を持って検討すべきです。

それぞれを擦り合わせる

今まで述べた通り、「自社の今を確認」して、「世の中の方向性を想像」し、それを元に「10年後の自社ビジネスを想像する」というプロセスを踏むわけですが、実際にやってみると、「世の中の方向性」と「10年後の自社ビジネス」がマッチしない。「10年後の自社ビジネス」が、「自社の今」からは全く想像できないほどかけ離れている。

などが必ず出てきます。むしろ出てこない方がおかしいので、「自社の今」と「世の中の方向性」と「10年後の自社ビジネス」を行ったり来たりしながら、擦り合わせましょう。

ただ、この検討にあまり時間をかけるのは良いことではありません。理由は以下の通りです。

  1. 時間をかければかけるほど、現状から想像がつくものに集約しがちです。つまりは今と何も変わらない。というものになってしまいます。今と何も変わらないので良ければそれに越したことはありませんが、大抵そんなことはありません。
  2. 所詮将来のことは誰にも分からないのですから、将来予測に過度に時間をかける必要はありません。いくら頑張っても思った通りにならないのが普通ですから、将来の状況変化に合わせて計画を随時変えて行く方が上手く行く確率が高くなるでしょう。

要は思い切りも大事ということです。

10年後のビジネスに必要な要素を洗い出す

現実には、前項までで説明した「10年後の自社ビジネスを想像する」でほぼ終わり、後は「各人奮闘努力せよ」な感じの経営計画が多いです。

昔、「ケネディが『月に行け』と公言したからアメリカは月に行けたんだ。経営者の仕事はこの『月に行け』と言う事だ」と言っていた経営者がいました。
確かに一般的にはその通りですが、アメリカ政府ほど組織も人材も充実していない中小企業の経営者としては「偉すぎます」。月に行きたかったら、そのための道筋も自分で考えましょう。

それにそもそも「10年後の自社ビジネスを想像する」&「各人奮闘努力せよ」は計画でも何でもないです。
社内に経営計画を作れる人材が存在すれば、その人に作ってもらえば良いですが、通常中小企業にはそんな人は少ないですから、経営者自ら「単なる想像」から「経営計画」まで落し込む必要があります。

で、計画を作ると言うのはある意味苦行です。言ってみれば「10年後の自社ビジネスを想像する」は、無責任に「ああなりたい」「こうなりたい」と言っていただけです。
それを実現しようとすると、現実の壁が出現し、「あれも足りない」「これも足りない」となりますから。

でも、その苦行を乗り越えるから価値があるのですから頑張りましょう。

具体的には、決めた「10年後の自社ビジネス」に必要な要素を、人・物・金、そして場合によっては情報、いわゆる経営の3(4)要素で分類して行くということです。

まずはお金

一にも二にも先立つもの、すなわちお金を見なければなりません。
人を雇うにしても、教育するにしても、設備を買うにしても、IT化を推進するにしてもお金です。
将来に向けてどのくらいお金を使えるか? 経営計画はほぼそれで決まりと言って良いでしょう。

お金は自社だけで賄うこともあれば、借入することもあるでしょう。補助金をアテにしても構いません。
それらを総動員して、使えるお金の上限を決めましょう。

ビジネスを要素レベルに分解する

「自社がやろうとしていることの実現手段を要素レベルに分解し、各要素の関係や動きを整理する」ということを行います。
ビジネスを進めて行く上では、人やノウハウの有無、仕組みをどうするかなど経営レベルの課題から、顧客に周知するにはどうしたら良いか? など実務レベルのことまで、いろいろ出てくるはずです。

それを要素レベルに分解し、各要素の関係や動きを整理します。当然優先順位も付けて行きます。

その手法として代表的なものが二つあります。
いずれも、やり方は検索すれば山ほど出てきますので、そちらを参照してください。

展開図
「目的」からそれを「実現するための手段」を考え、さらに初めの「実現するための手段」を「実現するための手段」を考えるというのを繰り返して行く方法です。
比較的簡単に実現手段を要素レベルに分解できますので、私もよく使っています。

展開図については、私の作った例もありますので参考にしてください。

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特性要因図
問題やトラブル発生時の原因分析のために用いられることが多いのですが、目的を達成するために必要とする事項を列挙して、その具体案も考えるという使われ方もします。

お金の上限と要素レベルまで落し込んだ実現手段のバランスを取る

やらなければならない事を全部出来れば、やれば良いのですが、現実にはまずお金の上限があって全部実行することは不可能です。
お金、社員の能力(能力アップするにはお金が必要)等々で出来ないことが多々見つかるはずです。

そこをなんとか調整して、100点は取れないけど、70点は取れそうだ。という線で考えて行きましょう。

出来ないことが出てくる

当然、出来ないことも出てきます。場合によっては、「10年後のビジネス」そのものを見直す必要もあります。

決まっても仮説に過ぎない

計画を立てたとしても、実際に出来ないこともあるでしょう。人・物・金で分類すると、以下のような事態が発生する可能性があります。

人:採用できない。教育できない。辞めてしまう
物:予想より早く陳腐化する
金:予想より出費が増える

そのたびに計画を見直す必要があります。

大切なのは、目標とそこに至るまでの道筋を決めること

以上簡単ですが、経営計画の立て方を説明しました。
これでは作れない? そう思います。
でも、何も無いより、陳腐な経営計画でも作った方がマシですから、まずは手を付けることをお勧めします。

実は、大事なのは、目標に到達するではなくて、目標に近付くことです。
何もなくプラプラ歩いているのではなく、あそこに行こうと決めて歩いていれば、少なくとも、あそこには近付くはず。近付いていれば、思ったより時間がかかってもそこに到達します。

また、目標そのものが間違っていた。ということがあるでしょう。これも何もなくプラプラ歩いているだけでは絶対気付かないことです。気付いたら引き返す。道を変えてみる。
一段大きな方向性(恐らく理念とかビジョンと呼ばれているもの)さえ外さなければ、道を間違えて引き返しても、道を変えても良いでしょう?

要は、経営計画は、理念やビジョンへの到達するために仮置きした道筋なのです。

会社は商店じゃない。
組織を作り「会社」を作ること 採用はそのスタート地点

「求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。」こんなことの繰り返しで、ずっと]採用活動を続けている。そんなことありませんか?

「曖昧な定義で“戦力”になりそうな人を探す」より「“戦力”を定義し」、「組織を作り」、その上で「自社にマッチした考えの人を採用し」、「育て」、「戦力にする」と視点を変えてみましょう。

これすなわち経営。採用活動こそが最初に経営の力が試される場なのです。