総務部長の役割、仕事内容、素質とは?

  • 2020年12月15日
  • 2021年4月6日
  • 採用

就職するにしても、採用するにしても、「一体どんな仕事で、どのようなレベルを求められているのか?」という視点が、曖昧なままというのが多いようです。

リクナビなどのアンケート調査を見ると、退職理由の4~5番目には「仕事内容」が必ず出てきます。トップでないので注目され難く、御座なりにしがちですが、逆に言えば地味だけど、必ず押さえておかなければいけない分野と言えるでしょう。

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と言っても、自社内の組織とその長や所属員の役割分担を定義し、明確にするというのはかなり難しい作業です。
そこで、「考える拠り所」として以下の3点を提案します。

  1. その職種の標準的な役割を知る
  2. 自社の実情を考え、標準的な役割に加減算する
  3. 元々の資質も見た方が良い

私の専門分野は総務・経理(それとIT)ですので、ここでは「総務部長」の標準的な役割の紹介と、見といた方が良い「元々の能力」とは何かについて、ご説明します。
総務部長の求人を出すときの、拠り所にしてください。

総務部門の顧客は誰か?

「総務部門の顧客は社内の人と組織全て」です。

ビジネスにおいては顧客は誰か?という問いが自社の役割を定義する際に必要でしょう。
社内の役割定義も一緒で、その部門の顧客は誰だろう?という問いにより、役割がある程度定義できます。

例えば、営業の顧客は正しくユーザーですが、往々にして社長を顧客と勘違いしているケースがあります。これではビジネスは上手く行きません。

一方で、製造部門は、営業を通して顧客を見るという立場ですから、広義ではやはり顧客はユーザー。でも狭義では、製造部門の顧客は営業部門と定義することが出来るでしょう。
しかし、たまに製造と営業の立場が逆転しているケースがあります。そういう会社はあまり上手く行っていないようです。

もちろん、お客様は神様ではないので、製造はなんでもかんでも営業の言う事を聞け!と言っているわけではないです。念のため。

総務部門の顧客は誰でしょうか? もちろん、広義ではユーザーですが、狭義では「総務部門の顧客は社内の人と組織全て」です。

社員が関わる法的なこと、共通インフラや環境の整備、雑務まで含めて、社内に向けてサービスすることで、営業や製造が後顧の憂いなく対ユーザーに専念できるようにするのが総務部門の役割と言えるでしょう。

総務部門の具体的な仕事内容は?

「社内に向けてサービスする」ですから、言ってみれば「必要なこと全部」です。
例えば家庭生活でも「穴があったら埋める」という役割が必要です。そして、普通はその役は親が担っているでしょう。
会社の総務部門はそういった部門です。

以上を踏まえて、総務部門の代表的な仕事を列記すると以下のようになります。

社員が関わる法的なこと

  • 安全衛生管理・メンタルヘルス
  • 社会保険
  • 労災事故対応

共通インフラか環境の整備

  • 文書や固定資産、消耗品等の管理
  • 建屋など、社内の共通インフラの整備・管理
  • 情報システムや、情報セキュリティーの整備・管理

総務部門が経理や人事などを兼ねるケースでは、以下も守備範囲になります

  • 経理や税務
  • 採用
  • 給与や賞与
  • 労働基準法

この他、「社内イベントや行事」なども担うことになるが多いです。

そして重要な仕事がもう一つあります。「社員の躾」です。
前述した家庭生活を例にすると、子どもに頼まれたら何でもかんでもやるは間違いです。
会社もこれと同じです。本来社員が自分でやるべきことは、自分でやるように躾をすることも大事な仕事です。

総務部長の役割とは?

では、総務部長の役割は何でしょう?「総務部門の役割」を踏まえ挙げて行きたいと思います。

総務部門を統括する

まず第一に来るのは、自部門の統括です。
統括する上で、まず重要なのは、「自分たちの顧客は社内である」意識の徹底と、「お客様は神様ではない」ことの徹底です。

前述の通り、「自分たちの顧客は社内である」を意識し過ぎると、社員の要求には何でもかんでも応じるという姿勢になりがちです。この状態では当の総務部員が持ちません。

逆に、「お客様は神様ではない」「社員の躾」が必要という面ばかりにフォーカスが当たると、「総務部は偉そう」ということで社内の反感を買います。

総務部長として最も大事な仕事は、この相反することのバランスを調整し、総務部員も他部署の人も気持ちよく働いてもらう環境を作ることです。
そういったバランス感覚マネジメント能力が必要です。

経営の補佐をする

総務部門の顧客は社内の人と組織全てですが、その中でも特に総務部長の顧客は経営層となります。ひとことで言えば、経営の分野だが、経営陣が不得意なことの補佐という役割を担います。
以下のような仕事があります。

  • 会社内外との契約の管理(会社によっては印章の管理も任されることもあります)
  • 取締役会の運営、株主総会の事務局としての運営

経営者の不得意分野に先回りして手を打つ。例えば、見えないところでリスクマネジメントをキッチリ行う。という総務部長がいたら、経営者は幸せでしょう。

それを実践するためには、当の総務部長が、会社のビジョンを理解し、概ねそれに同意している必要があります。
したがって、採用の時には、ビジョンの説明と、それに対する本人の考え方をしっかり確認しましょう。そして、日々コミュニケーションを通じて、会社のビジョンの理解を深めていくことが大切です。

ある面では対外的な顔の役割

お役所や業界団体とのお付き合いも、総務部長が担うことが多いです。
企業が行う社会貢献活動や、CSRの中心も総務部長が担うことが多く、こういった面でも社長に代わって、会社の顔としての役割を担います。

ここの役割でも、総務部長は、会社のビジョンを理解し、概ねそれに同意している必要があります。

会社によっては経理部長や人事部長の役割も兼務

大手企業では、総務、経理、人事、あるいは庶務などに分かれてるケースがありますが、中小企業の場合は、これらを纏めて総務と呼ぶことが多いです。

標準的な総務部長の役割を知らず、自社での総務部長の役割しか知らないと、抜けやすい点です。

経理や人事まで含めた総務部長なのか、いわゆる総務だけの総務部長なのかは、求人の際に明示してください。

でも突き詰めて行くと、やっぱりなんでも屋さん

いろいろ書いてきましたが、結局は「社内がお客さん」に尽きます。社員や役員が、めんどくさいこと、分からないことは全て回ってくるのが総務部長です。

繰り返しになりますが、社内の我儘を全て受けていたのでは、自身も部下も持ちません。かと言って理由もなくこれを断ったり、闇雲に「社員の躾」とばかりに自分で対応するよう求めても軋轢を生むだけです。

私の経験では、知識や見識面で社内で一目置かれる存在の「総務部長」がベストでした。
そういう総務部長の下では、部下も成長し、部門全体が社内で一目置かれる存在、例えると、「社員の親」になっていました。

こういう総務部門を持つ会社は強いです。

総務部長が持つべき資質とは?

最後は、総務部長の資質について述べたいと思います。
既に「総務部長の役割」で述べていますが、それを以下に整理します。

1.バランス感覚・マネジメント能力

「自分たちの顧客は社内である」と「お客様は神様ではない」の両立、徹底

2.理解力

会社のビジョンを理解できる力。そして、会社のビジョンと自身の考えが概ね一致していること

3.豊富な知識、高い見識を持つ

一言でいえば、社内で一目置かれる「大物感」

私がある会社の総務部長に聞いた話です。

ある時、社員が警察にごやっかいになるというケースに出くわしました(重犯罪ではなく、被害者との示談で決着というパターンです)。

警察から連絡を受けて、出向くと、本人はだいぶ絞られた後のようで、かなり憔悴している。
貰い受けに出向いた総務部長にまで、警察の人が説教をする始末。「会社の躾はどうなっているんだ?」ということでしょう。感じ悪かったそうです。もしかしたら会社として罰を与えるよう示唆をしていたのかもしれません。

貰い受けた後、本人からも事情を聞こうと思い、喫茶店に寄ったところ、本人が泣きながら「僕はクビですか?」と聞いてきたそうです。
恐らく警察にそうやって脅されたのだろうとのこと。

恐らくこういうときの会社の対応は二つに分かれるでしょう。クビにするか、クビにしないか。

件の総務部長は、経営者とそんな話はしたことなかったものの、その経営者の考え方を理解していたし、自分もその考えに賛同していたので、自信を持って「君は反省している。反省している人間をうちの会社がこのことを理由に、君をクビにするわけない。」と断言したそうです。

社に戻って、顛末は経営者に報告したところ、「それでよい」の一言で終わり。
しかし、暫くして他の部長クラスが騒ぎだしました。「クビにすべきではないか?」挙句には「件の総務部長の依怙贔屓ではないか?」と。

経営者が問題視していないことを、その部下が問題視するなんて変な話なんですが、件の総務部長曰く「この類の話は人それぞれで、正しいがないのだと思う」そうです。

で、このような社内の声を一切無視したところ、暫く後には沈静化したそうです。

ビジョンや、経営者の考えを理解し、自分で判断できること。
言っても無駄なことは言わないで、放っておくバランス感覚。
最終的には、多くの人が受け入れざるを得ない大物感。

その全てを兼ね備えた、この人こそ、私が見た中では、最高の総務部長でした。

こういう総務部長がいれば、経営者は安心でしょう。

採用に当たっては

スキル・資質は自社のニーズで加減算する

私が考える理想の総務部長像を述べてきましたが、そんな理想的な人はなかなかいないというのも現実です。

自社の実情に合わせて、スキル面だけでなく資質面でも、必要か、それほど必要ではないを見極めることが必要です。

例えば、カリスマ社長の会社であれば、「大物感」はそれほど必要ではなく、理解力やバランス感覚を重視した方が良いでしょう。

絶対に外せない「ビジョンへの共感」

今までの述べた中で、絶対に外せないのは、自社のビジョンへの理解と、それに共感しているか?という点です。

時に社長に代わって、社内の対応や、社外への情報発信をするのですから、これは当然と言えます。

この最も大切な「ビジョンへの共感」度合を知るための決定的な方法はありませんが、よりベターなのは、時間をかけて説明し、本人と対話を通じて理解度を測ることです。そしてこの作業は入社後も続けるべきことです。

所詮、人間の考え方は完全一致は不可能(というより完全一致したら怖いです)。でも時間をかけてすり合わせることは出来るでしょう。

 

以上「総務部長の標準的な役割」と「総務部長としての資質」について紹介しました。これに自社の実情から加減算し、自社に必要な総務部長像を描いて、採用に臨んで欲しいと思います。

会社は商店じゃない。
組織を作り「会社」を作ること 採用はそのスタート地点

「求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。」こんなことの繰り返しで、ずっと]採用活動を続けている。そんなことありませんか?

「曖昧な定義で“戦力”になりそうな人を探す」より「“戦力”を定義し」、「組織を作り」、その上で「自社にマッチした考えの人を採用し」、「育て」、「戦力にする」と視点を変えてみましょう。

これすなわち経営。採用活動こそが最初に経営の力が試される場なのです。