中小企業は若手だけを欲しがるから苦労する。採用条件は素質一本。経験、年齢、性別関係なし。

  • 2020年7月9日
  • 2021年1月19日
  • 採用

前回「考え方の注目した方がいい」というテーマで、自社のトラブルエピソードをデフォルメして、事前課題として出し、その回答を見ることで、今欲しい人材の素質(考え方)がある程度測れるんじゃないか?という提案をしました。

しかし、普通の会社の採用では事前課題なんて出したら、誰も応募してこないという懸念があります。昨今は売り手市場ということもあり、確かに誰にも相手にされないかもしれません。

若手の求人は過当競争

東京労働局のHPに、「関東市場圏有効求人・有効求職年齢別バランスシート(一般常用)」という資料があります。

東京労働局「関東市場圏有効求人・有効求職年齢別バランスシート(一般常用)」より引用

これを書いている時点では、令和2年3月が最新のもののようです。コロナの影響で、その前の令和元年12月版と著しく数字が変わっていますが、全体の傾向が分かれば良いので、これを使います。
一応、令和元年12月版の数字もカッコ書きで記述します。

見ると全体の有効求人倍率は1.25倍(1.47倍)と、コロナの影響を受けている割には、まぁ高い。(今後さらに下がるかもしれませんが)

年齢別内訳を見ると、34歳以下は1.74倍(2.02倍)とかなり高いです。
逆に45~54歳は0.88倍(1.06倍)、55歳以上は0.97倍(1.16倍)、そのうち60歳以上は、0.88倍(1.08倍)と1倍を下回っています。中高年はこれからますます大変になります。
職種別で見ると、事務的職業が0.41倍(0.45倍)と突出して低いのが分かります。

これは実感と差がないと思います。おっさんやおばさんの事務屋さんは、就職先がなかなか見つからない(私も事務職のおっさんです)。

要はどこの会社も若手を欲しがっており、過当競争になっています。少子化が進んでいますから、これから益々若手が減って行くので、それはさらに激化するでしょう。
結果、一般的な中小企業はこの層の求人をしている限り、まず採用できない。

みんなが若手を欲しがる理由は?

では、若手が欲しくて、中高年が要らないという理由は何でしょうか?私も採用やっていたので、まぁ気持ちは分かります。こんな感じでしょう?

  • 若手は育てることが出来るが、中高年は無理
  • 中高年は、頭が固く偉そうなので扱いづらい
  • 若手の方が先が長いので、定着してくれれば長い期間戦力となる
  • 組織の年齢構成上若手の方がいい(上司が自分より年上を扱うのは難しい)

私もこんなこと言ってました。。。今から振り返ってみるとかなり滑稽で。。。

若手を育てる仕組みありますか?

例えば、「若手は育てることが出来るが・・・」って当方(会社)に育てる力がなければ、どうでもいい話。
私の経験では、多くの中小企業は「育てる」と言えばOJTです。背中で育てるみたいな感じですが、これでは育成に確実性はありません。
それに、そもそも素質の有り無しは分からず採用していますから、素質の無い人にぶち当たったら、OJTで矯正は不可能でしょう。
「あいつ使えねぇ」で終わりというケースを何度も見聞きしていますし、恥ずかしながら自分も言ってました。

育成が上手く行かない場合、当然定着率も落ちてくるわけです。
「若い方が先が長い」は本人のアドバンテージであり、それを会社のアドバンテージにするには、会社そのものが若手にとって魅力的でなければいけないかと。

というか、しつこいですが、中小企業には、そもそも若手なんて来ないですよね。結局、若手だけを欲しがるから苦労するんです。

中高年は扱いづらい?

逆に中高年を嫌う理由である、「中高年は、頭が固く偉そうなので扱いづらい」「上司より年上を扱うのは難しい」というのは、得てして「職務分掌」が明確でないことから起こるんですよね。
「職務分掌」を明確にしてますか?
普通はしてないですよね。日本企業は大手でも曖昧です。

職務分掌が曖昧なまま採用すれば、本人は勝手に勘違いすることもあるでしょう。経験に基づきいろいろこっちが期待もしていない分野に口出してくる。
頭の柔軟性が低下しているから、臨機応変が出来ず、こっちが期待した動きが出来ないこともあります。

雇用契約をおざなりにしていませんか?

でも、そんなの当り前でしょう。何だか多くを求めすぎているような気がしますし、勘違いをする若手や臨機応変に出来ない若手も大勢いますよね。

そもそも相手が誰だろうと、求人時や雇用契約を結ぶときに「あなたの職務の範囲はここからここまで。」と明記する。
これは必須でしょう。

根拠を示して「不問」にする

ということで、私は中高年一押し。ではなく「年齢不問」にすべきと思います。採用条件は素質一本。経験、年齢、性別関係なし。
求人票に以下のように書けば良いと考えています。

「経験不問」「年齢不問」「性別不問」。何故ならば、「採用のポイントは、素質(考え方)」であり、素質のある人には、当社でも教えることは出来ると考えています。
素質を測るため、事前課題として「ある事例へのあなたが考える対処方法」を提出してもらいます。

そもそも今は、「雇用対策法」と「男女雇用機会均等法」により、原則「年齢」「性別」に制限は付けられません。だから逆に「年齢不問」「性別不問」に意味付けした方が、訳の分からない応募が殺到という事態を防げます。

また、世の中に理由の分からない(怪しい)「経験不問」は結構ありますが、これだったら「経験不問」の意味が分かります。

シンプルでロジカルと思いませんか?

求職者から見て、どうでしょうか?

ポイントは素質である、素質があれば教えられると考えている、素質は事前課題で測ると書いてあるわけですから、例えば「思考能力に自信のある、おっさんやおばさんの事務屋さん」でもチャレンジしようと思う人は居るでしょう。

もしかしたら若手でもチャレンジしてみようと思う人はいるかもしれません。

曖昧な経験を持った人より、素質面でこれは!と思う人の方がいいですよね?そこに年齢の縛りは必要ですか?

社会問題の解決になるのでは?

加えて、中高年、就職氷河期世代をも分け隔てなく募集するということは、社会問題に取り組むことになります。
その中から素質のある人を見極めるというのは、今の世の中の制度に一石を投じることになりませんか?

そしてこれは、今はやっている会社は少ないはずなので、世間の注目集めます。
採用に限らずビジネス全般に良い影響がありますよね?

このように、ちょっと切り替えるだけで、夢が広がると私は思います。
ただ、「やっぱり相性がな~」という点もあるかと思います。それは別の機会に。

会社は商店じゃない。
組織を作り「会社」を作ること 採用はそのスタート地点

「求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。」こんなことの繰り返しで、ずっと]採用活動を続けている。そんなことありませんか?

「曖昧な定義で“戦力”になりそうな人を探す」より「“戦力”を定義し」、「組織を作り」、その上で「自社にマッチした考えの人を採用し」、「育て」、「戦力にする」と視点を変えてみましょう。

これすなわち経営。採用活動こそが最初に経営の力が試される場なのです。