採用する会社と求職者の相性について。採用時点で相性を知る事はできるか?

  • 2020年7月1日
  • 2021年1月19日
  • 採用

相性が合わないというのは、嫌ですよね。
それは会社と個人の関係、会社の中での人間関係にも言えることです。というより、平日の大部分の時間を過ごす会社で、相性が悪いというのはかなりキツイ。

会社側からみても、相性が悪いが故に期待したパフォーマンスが出ないというのも辛い。本来はマネジメントがそれをカバーする立場ですが、それもなかなか。

ということで、今回は「採用時点で相性を知る事はできるか?」について自分の失敗談も合わせて考えていきたいと思います。

お互いに自分を偽ってする活動になっている?

そもそも現状の採用/就職活動は、お互いに自分を偽っているように思います。

長年採用に携わった私の印象では、「採用プロセスを進めて行く間、一貫して企業も求職者も、自身の実像をあからさましない」というのが横行しています。

気持ちは分からなくもないですが、それは本当は非効率極まりないですよね?

多くの求職者は会社の良い点、悪い点に興味があるはず

多くの求職者は、その会社の良い点、悪い点に興味があると思うんです。長く勤めたいと思っている人がほとんどですから、ちゃんと知りたいですよね。

求職者も戸惑っているようですよ」で挙げた、求職者から聞いた内容では、以下の通りその会社の社風や雰囲気、自分との相性が多い(★印)です。
(なお、本件の詳しい考察については、上記リンクを参照ください)

(1)きっちりした会社に入りたかった
(2)今の閉塞感から脱したかった(★)
(3)新しい会社で魅力を感じた
(4)就職エージェントからは公開情報以外の情報は無かった(★)
(5)面接してみてまともでない会社が多かった
(6)転職先候補の比較検討はあまりしなかった(★)
(7)口コミサイトやホームページで、会社の評判や考え方はチェックした(★)
(8)前職は営業で、実は自分は営業に不向きと思っている
(9)自分に興味がある分野で仕事がしたい
(10)転職後の人間関係が気になる(★)

しかし、現状では、求職者は会社の雰囲気や本音は、採用のプロセスを通じてはほぼ分からないでしょう。
会社も適性検査や性格検査、あるいは面接で質問攻めに出来るので、多少マシですが、まぁ難しいでしょう。

何故かというと、「採用プロセスを進めて行く間、一貫して企業も求職者も、自身の実像をあからさましない」からです。双方悪気はないのですが、結果的に狐と狸の化かしあいをしているということ。

理想としては正直が一番だが

理想としては、「採用プロセスを進めて行く間、一貫して企業も求職者も、自身の実像をあからさまにする」ことだと思いますが、なかなかそれも難しいです。

まず、信頼関係が構築できていない段階で、本音なんか絶対に言えないです。
普通は、採用の段階では信頼関係を構築する段階に至っていないですもの。特に気分的に弱者になってしまいがちな求職者は本音は言えないでしょう。相手の器が分からないですものね。

正直に言っているつもりでも

しかし、入社後早期退職にならないようにするには、お互いに出来るだけあからさまにした方が良いと思います。
で、単に「採用する」という視点では、企業側のアプローチはこれが正解じゃないかと思います。良い所も悪い所もさらけだすことで、信頼されるケースがあるんで。(これ何度も経験しています)

ところがこれも問題があって、以下のパターンがよく見られます。

(1)ほとんど本音で言ってるけど、肝心な事は言い難いことが多く、なかなか言えない
(2)会社の事を説明する人や面接者(大抵経営者)が思っている以上に会社の雰囲気が悪い
(3)たまに、自分が理想と思っている状態を、自社の事として語ってしまう経営者がいる(これ意外と多いです)

積極的に騙そうとしているわけでは無いのですが、結果騙しちゃうんですよね。(1)は思い切りが悪い、(2)は経営者として能力不足、(3)は病気。

徹底的にあからさまにしても上手くいかない

一方で、私みたいな第三者が採用に絡むと、比較的(1)~(3)は起こり難いです。自分の会社じゃないんで、変な思い入れもありませんので、比較的客観視できますので。

そこで、私が関わる場合は、思い切って本音で良い点、悪い点を話します。
大抵以下のような結果になります。

(A)求職者から絶大な信頼を得るケースが多い(何度も経験しているというのはこのことです)
(B)特に中途の場合は、大抵のことは現職で経験しているので、理解が早い。「あるあるですよね」って感じ

で、そうであるが故に失敗する。という結末。。。

良し悪しのレベルまでは想像がつかない

例えばこんな感じです。「営業と製造の仲が悪くて、顧客対応より社内の調整に苦労するんだよね」と説明します。
こんなのどこの会社も多かれ少なかれありますから、求職者は「よくある話ですね」と理解を示します。

ですが、ここの理解は、“今まで自分が経験した”「営業と製造の仲が悪い」状態をベースに考えるので、それがどのくらい重大なことか?までは想像がつかない。
事象は分かってもレベルまでは想像できていないのです。

採用して3ヶ月で辞めた人が退職時に「入社してみて、あなたが言っていた一つ一つのことが、『あぁ、このことを言っていたのか』と理解できた。申し訳ないけど、面接などのときに言っていただいた点は、自分にとって大したことないと思っていた。何であんなにしつこく言われたのか、今になってやっと分かった」と言われました。

これも結局、役に立たなかったのです。

それでも本当のことは言った方が良い

それでも、採用する側としては、出来るだけ本当の事を言った方が良いと思います。

ホームページも採用エージェントが出す求人票もいい事しか書いてない(それはそれで仕方ないです)。
だから話すときぐらいは、「それだけではない」というのが親切だし、入社した人がすぐ辞めてしまうような失敗採用を回避できる確率を上げることになると思います。

でも、一定量は失敗するでしょう。
それはリスクとして許容すべきと思います。辞めてしまうのは、仕方ない。
逆に相性が合わなくても、その人が居続けるなら、戦力として生かす。
それがトップの仕事ですよね。

まず本当のことを知らなければならない

人が退職する。特に入社後すぐ辞めてしまう。という事象が起きたときは、自社のことを見つめ直すチャンスです。

肝心なことを言えていないのかもしれない。
そもそも会社の実情を分かっていないのかもしれない。
理想と現実を混同しているのかもしれない

そうやって問い直せば、改善しなければならないポイントは見えてきます。
退職した人の問題として捉えているだけでは、進歩が無いですから。

会社は商店じゃない。
組織を作り「会社」を作ること 採用はそのスタート地点

「求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。」こんなことの繰り返しで、ずっと]採用活動を続けている。そんなことありませんか?

「曖昧な定義で“戦力”になりそうな人を探す」より「“戦力”を定義し」、「組織を作り」、その上で「自社にマッチした考えの人を採用し」、「育て」、「戦力にする」と視点を変えてみましょう。

これすなわち経営。採用活動こそが最初に経営の力が試される場なのです。