こんな社風は嫌だ~方針がない~

  • 2020年8月31日
  • 2021年5月18日
  • 社風

今どきの採用/就職は、失敗が多いと考えています。その原因は、本当は大事だと思う、以下の2つについて、企業が明確にしない点と考えています。

(1)企業が必要としているスキル
(2)社風や人間関係

この2番目の“社風”について焦点を当てようと思います。
それ次第で、採用が覚束なかったり、せっかく採用しても早期退職になってしまいますので。
(過去、私が実際に見聞きした中で、社員目線で「これはキツイだろうな」と思った実例を紹介します。極端な事例もあって直接参考にはならないかもしれませんが、こんなこともあるのか。程度に考えていただければと思います。)

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今回は「方針がない」です。

AもBもやり切れば力がつく?

かなり昔のお話しです。
まだ会社勤めだったころ、会議である社員が「AとBのどちらを優先させたらいいでしょうか?」と、経営者に聞きました。
その返答が秀逸。

「Aをやりながら、Bも頑張って両方やり切るんだ!両方やり切れば、2倍の力が付くじゃないか!どうやって両立できるかを考えて実践するのが仕事だよ!」と満面の笑みで。

情けないことに、私はこの返答に素直に感心してしまいました。「そうか頑張ってAとB両方達成すれば、倍勉強できて、一気に自分の能力が倍になるのね」と。

まぁ、その問題の当事者でなかったこともありますが、浅はかでした。

倍できたら誰でもやりますよね

今振り返ってみると、「酷い返答だったな」と思います。
普通の真面目な人なら、出来るならAとBを両立させようと思うでしょう。
私も意外と真面目なので、そうします。
というか「AとBのどちらを優先させたらいいでしょうか?」という疑問さえ持たないです。

この疑問を抱いて、経営者に確認しようと思ったのは、AとBの両立は難しい、あるいは不可能であると本人が考えたからです。

それに対して、「Aをやりながら、Bも頑張って両方やり切るんだ!」というのは全く答えになっていません。

浅はかに感心していた立場の人間が言うのも変ですが、私が当事者の立場だったら、困惑、幻滅し、「いやいや私の聞きたい事はそれではありません」と言うでしょう。

全部やれ!それ方針ですか?

そういう視点で見ると、多くの会社の予算方針などは、結構「全部やれ」と書いてあることに気付きました。

例えばこのような感じです。

「品質を高めつつ、納期に注意を払い、顧客満足を高めよう。同時にコストも意識し、利益に結び付けよう!」

繰り返しますが、品質・納期・コスト全て問題なければ、ほとんどの人は言われなくてもやります。

問題は、それぞれが相反するときです。
例えば、難しい案件で、当初の納期が守れそうもない。どうするか?

・品質を落として、納期を守るか?
・品質を落とさずに、約束した納期を延長するか?
・納期を延長した場合、発生する追加コストは、顧客に請求するか?

会社の方針を見ても、判断できません。そこで上司や経営者に聞くと、

「品質も守りながら、納期も頑張って守るんだ。もちろん余計なコストもかけられないから、これも頑張って厳守だ。」

と言われたら、社員が取り得る手段は「サービス残業」となります。

ついでに「それにチャレンジすることで、みんな成長できるんだ!」と来たら、もうそれはブラック企業そのものです。

しかし、そもそもの方針に忠実であれば、「それにチャレンジすることで、みんな成長できるんだ!」はともかく、こう指示を出さざるを得なくなります。

方針とは?

「方針」を辞書で調べると、「ある事をするのに当たって定めた、その行動や処置の方向・原則」とあります。

方向とは、AとBどちらにも行けるけど、そのどちらに行くか?です。
原則とは、判断に迷ったときに取るべきことです。

「品質、納期、コスト全て守れ」は、方向を示していません。そしてそれが相反するという事態を想定していない。
判断に迷うということがあると想定していない。

故に「品質を高めつつ、納期に注意を払い、顧客満足を高めよう。同時にコストも意識し、利益に結び付けよう!」は方針ではありません。

この場合の本来の「方針」は、品質と納期、コストが相反したら、それぞれの優先順位はどうすべきか?ということです。

また、「方針」は方向を示すものですから、一般的な正解はありません。
その会社のもっと上位の概念、理念やビジネスの在り方に基づいて導き出されるもの。
有体に言えば、「うちの会社はどこに行きたいのか?」「AとBとCのどの道を進むべきか?」ということです。

「Aをやりながら、Bも頑張って両方やり切るんだ!」というのは、思わず言いがちですが、根本的には「方針」が無いから出てくるのです。

「方針」が無ければ、事あるごとに社員は迷うばかり。最後には疲弊し、辞めて行くでしょう。

会社は商店じゃない。
組織を作り「会社」を作ること 採用はそのスタート地点

「求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。」こんなことの繰り返しで、ずっと]採用活動を続けている。そんなことありませんか?

「曖昧な定義で“戦力”になりそうな人を探す」より「“戦力”を定義し」、「組織を作り」、その上で「自社にマッチした考えの人を採用し」、「育て」、「戦力にする」と視点を変えてみましょう。

これすなわち経営。採用活動こそが最初に経営の力が試される場なのです。