脱下請

私が新卒から29年間勤めた会社、入社当初は酷いものだったのですが、3年目に入社して来た上司は素晴らしい人でした。

後年その人とちょっとトラブルになりまして、今はもう会うことも無いのですが、若かった自分にとっては、大いに刺激を受け、成長させてもらった存在。
ある時期までは、自分にとって理想の上司でした。

ここのブログは、企業の採用や教育を考えて行こうというのがテーマですので、過去私が部下として経験したマネジメントや経営手法を紹介したいと思います。

今回は「脱下請」です。その会社にとってはこれが悲願だと私は思っていたのですが、今振り返るとそうでも無かったのか?と。
もしかしたら、社員に夢や希望を持ってもらうための方便だった?穿った見方ですが、まぁ経営的にはそれもありだと思います。

創業期

私がこの会社に入社したのは創業2年目です。
当時は、「今後IT技術者が何十万人(記憶が曖昧ですが)不足する」と言われていて、大手を含め、なんでもいいから人集めをするという感じでした。
で、人を集めたら、大手に派遣する。今では考えられないですが、それだけで経営が成り立つような時代。

私の会社も、メーカー系の大手IT企業の肝煎りで、人を採用し、全員そこに派遣に出す。という前提で作られた会社でした。

目的をもった派遣事業

私が入社3年目に件の上司が入社しました。
正にその時、下請会社の悲哀を経験します。1988年前後に不況になり(確か「半導体不況」と呼ばれてました)、採用した新入社員を受入れてもらえない。という事態になったのです。

前年夏から秋の採用活動時は、「もっと採用しろ!」と言っておいて、入社するときになったら「不況だから要らない」と。

他の会社に採用させるというのはこういうことで、派遣先の大手企業は、自社のリスクヘッジをしているだけなんですよね。

この経験があったからか、後日「当社のような中小企業は、景気に左右されないビジネスを模索すべき」という考えが打ち出されました。大手におんぶに抱っこの派遣事業は、景気に左右されやすいから、将来的には派遣事業は脱却すべきということです。

そして、既にある派遣も以下のように定義されました。

  1. 派遣という形で、大手企業に入って仕事をすることで、自社では出来ない経験を積む
  2. その経験を経て一人前になったら自社に帰って、自前のビジネスを始める

つまり「派遣」は人材育成の手段であるということです。

この時点で「将来は派遣事業(下請ビジネス)でなく、自社の独自ビジネスを始める」という方針が示された。と少なくとも私は認識しました。

具体策は“まだ”ない

と言っても、この時点でその具体策はありません。
創立間もないし、新卒しか採用していないので、みんな初心者。
社員が一人前になるまでは具体策は打ち出せませんが、そのうち具体策が必要になる。というのは誰でも分かる事。

具体策が明らかになるのはいつか?なんて思っているうちに、5年、10年と経過し、その間、社員は派遣先に塩漬けに状態。派遣先の仕事しか出来ないので、さて自社ビジネスを始めようとなっても。。。という状態になってしまいました。

そもそも下請脱却しいたくない人たち

何故こんなことになったか?
世はまさにバブル景気真っ只中。景気さえ良ければ、派遣ビジネスは、会社にとっても、派遣に出ている本人にとっても楽ちんなのです。
逆に「将来を見据えて自前のビジネスをする」というのは、まぁめんどくさいです。

人間は易き方に流れるので、下請、派遣のままの方が良いと思う人が居ても当然。むしろ大多数がそう思っていたのではないか?

加えて、「経験を積む」とか「一人前になる」というのは漠然としていて、今何をすればいいのか?いつまでに何をすればいいのか?というのは全く分かりません。
今やる事、いつまでに何をするか決まっていなければ、それはやるつもりが無いということ。

結局誰も、下請脱却=自前のビジネスを本気で考えていなかったのだと思います。

具体策を出すものの

後年、私もマネジメントする立場になって、上記の問題に気付いたので、今以降の戦略、戦術から今学んで欲しい点などを、毎日ブログという形で発信しました。

しかし、後の祭りで、今までの流れは変えられず、このことで件の上司への不信感を持ってしまい、結局退職に至りました。

今の気付き

私が所属していた会社は、今でも、たまにつまみ食いみたいな新規ビジネスを始めては、早々に撤退しています。それは、単にポーズでやっていて、大けがしないようにしているようにも思えます。

今から考えると、派遣だけでは夢も希望も無いので、希望を作りたかっただけなのか?とも思います。

経営上、安定収入は維持したいものの、その仕事はあまり面白くない。
そういう時にメインの仕事とは別に新しい事にチャレンジすることでガス抜きをする。
それが成功したら良いが、失敗しても、まぁ良い。というケース。

確かに、これはこれで経営としてはアリなのでしょうが、方針として提示するなら、真意に基づくべきでしょう。
そして経営者自ら本気で取組む。
でないと社内が混乱するだけです。

実際、件の上司の真意は分かりませんが、「脱下請け」という方針を真に受けていた人間としては、それならそうと言ってくれれば良かったのに。という気持ちになります。

会社は商店じゃない。
組織を作り「会社」を作ること 採用はそのスタート地点

「求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。」こんなことの繰り返しで、ずっと]採用活動を続けている。そんなことありませんか?

「曖昧な定義で“戦力”になりそうな人を探す」より「“戦力”を定義し」、「組織を作り」、その上で「自社にマッチした考えの人を採用し」、「育て」、「戦力にする」と視点を変えてみましょう。

これすなわち経営。採用活動こそが最初に経営の力が試される場なのです。