全員営業

私が新卒から29年間勤めた会社、入社当初は酷いものだったのですが、3年目に入社して来た上司は素晴らしい人でした。

後年その人とちょっとトラブルになりまして、今はもう会うことも無いのですが、若かった自分にとっては、大いに刺激を受け、成長させてもらった存在。
ある時期までは、自分にとって理想の上司でした。

ここのブログは、企業の採用や教育を考えて行こうというのがテーマですので、過去私が部下として経験したマネジメントや経営手法を紹介したいと思います。

今回は「全員営業」です。少なくともこのコンセプトを打ち出すことで、営業マインドの醸成には役立ちましたが、なかなか実践の場を作れず、先に進めない。という失敗をしてしまいました。

営業専属がいない

私の尊敬していた上司は、来た早々から「社員全員が営業をする」そして「営業専属社員を置かない」と宣言しました。

理由は二つあります。

  1. 顧客と技術者の間に営業がいることで、本当にニーズが技術者に伝わらない→だから技術者自ら顧客に出向いた方が良い
  2. これからの時代は、コテコテの技術者ではなく、幅広い知識や経験があった方が生き延びる確率が高い。特にビジネスを進める上では営業は必須スキルなので、全員に営業スキルを磨いて欲しい

実際に私が顧客(総務なので)として接する営業さんの中には、技術に詳しい人も居て「こういう技術にも詳しい営業さんだと、話が早くて助かる」と考えていたので、私はこれに完全同意です。

総務でビジネスを始めた

ある時「全員営業」なんだから、何も技術者だけでなくて、総務もビジネス起こして営業しちゃおうか。なんてこと考えて、仲間も賛同してくれたので、いろいろやってみました。

話が逸れますが、その成功例のみ紹介します。いい思い出なんで。

  1. 採用で就職セミナーの申込み処理が大変(当時はハガキか電話)なので、当時普及し始めていたi-modeで就職セミナーを予約してもらうシステムを開発してもらい、社内で使うと共に、代理店を通じて外部に販売
  2. 自社で給与計算や財務会計のパッケージシステムを導入した経験を生かして、パッケージ導入コンサルタント

実は、私は人付き合いが苦手で、営業なんて絶対できない。と思っていた(だから総務・経理分野を志向した)のですが、やってみるとそれなりに出来るようになりました。経験は大事ですね。

こうやって私の仲間たちの中には、総務・経理やITの使いこなしスキルに加え、営業も出来るようになるという、技術者ではないですが、元々の狙い通りの人材に育つ人も出てきました。

派遣先は絶好の営業の場

一方で、IT部門ではなかなか定着しなかったように思います。

この会社はIT技術者派遣の比率が高い会社。派遣の中で「営業」と言われても、何に手を付けていいか分からない。というのが一つの理由でした。

掛け声だけで、現実に即した戦略・戦術が無い。といういつものパターンです。

実は営業という視点に立ってみると、派遣というのは以下の二点が解決済です。

  1. 営業する上での壁は、顧客候補を見つけて接触すること
  2. 顧客のお困りごとが分かれば、提案に結び付けられる

既に顧客候補の中で仕事してますし、顧客が抱えてる課題を中の人として見ることが出来ます。

こう考えれば「派遣の中の営業」も出来るのでは?と考え、仕組みを作り、自分たちに足りない点(例えば「顧客のお困りごと」をどうやって知るか?」など)は、外部の講師にお願いし、教えてもらうという形を取り、「全員営業」への具体的な取り組みを始めました。

実践の場がなくなり定着せず

ところが、その途中で別件のトラブルで退職。
まぁこの取組も批判の対象になって。。。何が悪いか未だに分からないんですけどね。

会社を運営して行く上で、「全員営業」=社員全員に営業マインドを持ってもらうというのは正しい施策です。
その上で、技術に強い社員は「技術+営業」、営業に強い社員は「営業+技術」という形に持って行くというのも正しいと思います。

私個人としては、自分やそのグループで、「営業」をしてみて、すごく成長できたと思ういます。その経験を踏まえると、他の社員、特に派遣で出ている社員には、実践の場が少なかったために定着しなかったと考えています。

あのまま「派遣の中での営業」という取組みを続けられたら、みんなに実践の場が出来て、成長できる人もいたかもしれません。

ということで、いくら正しいコンセプトを作っても、実践の場を作らなければ、ただの掛け声。といういつもの結論でした。

会社は商店じゃない。
組織を作り「会社」を作ること 採用はそのスタート地点

「求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。」こんなことの繰り返しで、ずっと]採用活動を続けている。そんなことありませんか?

「曖昧な定義で“戦力”になりそうな人を探す」より「“戦力”を定義し」、「組織を作り」、その上で「自社にマッチした考えの人を採用し」、「育て」、「戦力にする」と視点を変えてみましょう。

これすなわち経営。採用活動こそが最初に経営の力が試される場なのです。