私が新卒から29年間勤めた会社、入社当初は酷いものだったのですが、3年目に入社して来た上司は素晴らしい人でした。
後年その人とちょっとトラブルになりまして、今はもう会うことも無いのですが、若かった自分にとっては、大いに刺激を受け、成長させてもらった存在。
ある時期までは、自分にとって理想の上司でした。
ここのブログは、企業の採用や教育を考えて行こうというのがテーマですので、過去私が部下として経験したマネジメントや経営手法を紹介したいと思います。
今回は、「予算管理をしない」です。予算策定するものの、それはアラートして使用するだけで、普段は見もしない。という経営をしていました。
因みに世の中にも同じような考え方もあるようで、こんな本も出版されています。
予算制度の問題点1~予算策定の膨大な時間を取られる~
まずは、当時件の上司が語っていた、予算策定時の問題点を挙げます。
- もっともらしい数字を作るために、膨大な時間をかける
- 予算の承認をもらうために、上司と駆け引きまでする人もいる
転職して予算管理をしている会社に行ったら、このような傾向は確かにありました。
予算に時間をかけることや、駆け引きのために目標値を低めに設定したりする事例は多かれ少なかれ目にしたし、予算に慣れていない私は、駆け引きもせず真っ正直に作成して後で酷い目にあったり。。。確かにこの時、「こりゃ無い方がいいわな」と思いましたね。
予算制度の問題点2~予算に縛られる~
膨大な時間をかけて、駆け引きまでして作った予算ですか、執行段階も問題があります。
- 予測でしかないものに縛られ、予算の奴隷のようになる
- 予算策定時と情勢が変わっても予算執行は変えにくい
- 予算さえ通れば、不用品でも購入してしまう
社会情勢が変わっても、当初予算に拘り続け、結局予算未達。それを取り繕うために
期末に翌期の売上を前倒しで入れて、翌期もドツボ。
予算を余らすと翌期の予算枠が減らされるので、その時点で不要でも買うとか。。。
まぁ、企業の大小に関わらずあるようですが、原点に帰って、なんのために予算を作るのか?と考えてみるとバカバカしい限りです。
予算の存在を社員が知らない
以上が、予算制度の問題点と考えていたのですが、では私がいた会社ではどうやっていたか?
予算は「これ以下はまずい」というアラートの役割
派遣が主業務だったこともあり、以下の通り割と簡単なんです。
売上:派遣単価×時間×派遣している人数
原価:ほぼ人件費
これで、派遣部門の粗利はほぼ確定。あとは、派遣以外のビジネスに対応している社員の原価を算出して、「これくらい売上がないと、赤字だよ」というラインを設定します。
で、実績がこのラインを下回るかどうか、という点のみを見ているだけです。
社員は予算を知らない
上記の予算はほぼ私一人で作成していました。エクセルでほぼ自動化してたので、造作もなかったです。
目的が「これ以下はまずい」時のアラートですから、社員はおろか幹部や役員までその実態は知らない。という代物でした。
予算になくても必要ならばやる
当然誰も知らないので、売上目標も逆に売上上限もありません。好きなだけやっていい。
費用も、予算上の枠はありましたが、それに拘りはなく、必要であれば支出OKでした。
このようにして、前述した予算制度の問題点はクリアです。
予算制度の問題点 | 私が所属していた会社での解決策 |
もっともらしい数字を作るために、膨大な時間をかける | 時間をかけず目的に合致した数字を作る |
予算の承認をもらうために、上司と駆け引きまでする人もいる | 知らないものは駆け引きしようがない |
予測でしかないものに縛られ、予算の奴隷のようになる | 全社員が知らないから自由 |
予算策定時と情勢が変わっても予算執行は変えにくい | 下限しか設定していないので、柔軟に対応出来る |
予算さえ通れば、不用品でも購入してしまう | 購入時に必要かどうかを必ず問う |
予算を知らないからこそ自分で考える
そもそも「社員が自分で考える」に拘った会社ですから、このような予算もその為にあるのです。
予算という拠り所がないのですから、場面ごとに考えなければならない。
もの一つ買うにしても、買うときに「本当に必要なのか?」と自問するわけです。
実際に総務やビジネス部門でも私が関わった部署では、多くの社員が、まず「そもそも必要か?」と問い、次に「今あるもので代用できないか?」考え、それでも必要という結論に達した時点で購入申請してました。こっちもそういう考えをすることは分かっているので、無条件に承認。ものすごくスピードがあってしかも楽ちんでした。
退職後
以下余談です。
私が退職後、総務の後任から「江田さんが辞めてから幹部のタガが外れたように、お金の使い方が酷くなった」と度々聞きました。その後、総務の人が複数退職したのですが、この点も退職に至った原因の一つとしてあったようです。
どうやら、彼らは「必要か?必要でないか?」と考えず「欲しいか?欲しくないか?」で考えるものの、私が恐いか、煙たいかで、今まで言い出せなかっただけだったようです。
この予算制度が成立するためには、「全員が高い精神性を維持すること」が必要と考えてたので、正直がっかりしました。
幹部社員がこのレベルであれば、無駄使いばかりになるので、それを防止するために世の中一般の予算制度を導入するか、私みたいに煙たい存在に頼るかです。
それにしても「私ってそんなに煙たかったのかな~?」とちょっと凹みますね。