総務部門のOKR

知人から、OKR(Objectives and Key Results)というマネジメント手法を紹介されたので、調べてみました。

なんでも「Googleも採用する目標管理」なんだそうで、もうこのキャッチだけで眉唾ものだし、取り寄せた本(「OKR」クリスティーナ・ウォドキー (著))の初版は2018年だったので、もう廃れているのでは?なんて思いつつ。。。ですが、私はこの手のものは出来るだけ確認することにしています(理由は後述します)。

で、案の定、「まぁよくある流行りもののフレームワーク」以上でも以下でも無いよな~という感想を持ったのですが、その肝は悪くないと思ったので紹介します。

その肝とは「忘れない仕掛け」です。

OKRとは?

まずは初見の方のためにOKRの概要から説明しましょう。
(詳細なHow toは、紹介したOKRの本を読んでもらうか、「OKR」で検索すれば山ほど出てきますので、そちらをどうぞ)

OKRは、「O」と「KR」に分類されます。
「O」は、Objectives(目的あるいは目標、OKRでは目標と訳されているようです)の略。「KR」は、Key Results(主要な結果)の略です。

OKRでは、「1つの目標と、その達成度を判断する結果指標を3つぐらいに絞って決める」とされています。

これだけシンプルだと、まず「忘れなそう」です。1つの目標と3つの指標だけですから。

さらに、「O」と「KR」の定め方には、それぞれ以下のお作法があります。

「O」定義のお作法
(1)定性的で人を鼓舞する内容にする
(2)時間的な縛りを作る
(3)各チームが独立して実行できるようにする

「KR」定義のお作法
(1)定量化する
(2)達成への自信度は50%(つまり半分程度しか達成できない見込の数字にする)

現実には、この条件を満たす「目標」と「指標」を作るのはかなり難しいです。
アメリカ発のものなので、「Oは従業員が毎朝、わくわくしながらベッドを飛び出すものにしよう」なんて記述がり、思わず「そんなのそう簡単に思いつくわけないだろ!」と突っ込みたくなります。

もちろん、「O」と「KR」を導き出す手法の説明はあるのですが、それでも「それが出来たら苦労はしないよ!」という点が拭えず、「まぁよくある流行りもののフレームワークだよな」と思いました。

忘れない仕掛け

一方で、OとKRを忘れない仕掛けというのは、良いものだと思いました。
そもそも、「1つの目標と、3つの指標」ですから、覚えていられる範囲でしょう。さらにこれを忘れないように、以下のような仕掛けを用意しています。

  1. 期間(「O」定義のお作法(2))は1ヶ月から四半期で実現できるものにする
  2. 毎週月曜日にミーティング(チェックイン・ミーティングと呼んでるようです)を開き、OKRの進捗チェックとその週のタスクを挙げて、コミットメントする
  3. 毎週金曜日に各チーム(人)が達成できたことを披露し合う(ウィン・セッションと呼んでいるようです)

全体の期間もかなり短期間(1ヶ月~3ヶ月)ですが、さらにそれを1週間単位で区切って、タスク設定と達成度の確認するという形です。
確かに、達成確率50%の指標が、「行けそう?」「無理そう?」と毎週金曜日に皆で集まって確認し合う。というのは盛り上がりそうではあります。

このウィンセッションもアメリカンなノリで、「ビールやワインを用意して楽しくやろうぜ!」みたいな感じです。
まぁそれは置いておいても、この週単位でタスクを挙げて、その成果を確認し合うというのも、実際にやってみると、かなりストレスがあるでしょう。

ただ、「忘れない」という意味では、有効かと思います。

肝は「なぜ、やり遂げることができないか?」という問い

OKRの本に「なぜ、やり遂げることができないか?」という問いがあり、その解を探っている件がありました。

(1)ゴールに優先順位を付けていない
(2)熱意を持って漏れなくゴールを伝えていない
(3)やり遂げるためのプランがない
(4)重要事項のために時間を割いていない
(5)繰り返さずにやめてしまう

引用:「OKR」クリスティーナ・ウォドキー (著)

私も経験がありますが、やらねばならないことって考えれば考える程出てくるし、一度決めたことをしつこく意識し合う行為も怠りがち。

目標を決めたものの、実現へ向けてのプランはすっかり抜け落ちているというのも良くあるし、日常の些細なことに時間を使ってしまい、結局出来なかったことに言い訳している。なんてもともしばしばあります。

そして、一度上手く行かないと諦める。

これには思い当たることが山のよにありますから、納得。

要は、人の特性を考えた上での、忘れずやり切るためのフレームワークなんだろうと思います。

当初のOKRシステムは、ストレッチ・ゴール(さらに上のゴール)を賢く設定す る方法にすぎなかった。しかし、コミットメント、お祝い、チェックイン・ミーティング などの周辺システムのおかげで、仕事をするよりクッキーが食べたい気分のときでも、ゴ ールに向かって歩きつづけることができる。

引用:「OKR」クリスティーナ・ウォドキー (著)

ここが肝なんでしょう。

フレームワークのいいところ取り

このようなフレームワークの良い所は、すぐ試せることです。
仮に「なぜ、やり遂げることができないか?」という問いを自ら立てられたとしても、その対応策を自分で考え実行するのはかなりの時間がかかります。

フレームワークはその面倒くさく時間のかかる過程を飛ばして適用できるところに価値があると考えています。

もちろん、実行に当たってはいいとこ取りすれば良いのです。「ビールやワインで楽しくやろうぜ!」なんていうのは、何も真似する必要はありません。

総務部門のOKR

ここでやっと本題ですが、総務部門(会社によっては、総務・経理・人事などに別れていますが、それを一括りにして総務部門と呼びます)が、このOKRにどう関わるでしょうか?

私はこのようなフレームワークで良いかも。と思ったものは、総務部門で積極的に取り入れてみるというのを推奨します。

理由は二つあります。

  1. 総務部門だからこそ、社内の課題に気付く。全社課題の改善提案は総務部門の役割でしょう
  2. そもそも総務にだって課題があるのだから、総務がお試しでやってみる。上手く行ったら全社に広めてみる

営業や現場部門というのは、実務レベルの改善は得意ですが、部門横断的、全社的な改善にまでなかなか目が行きません。改革レベルになったらもうお手上げです。
もちろん彼らの役割上、それは当然なこと。だからこそ総務の出番があるのです。

そのために、総務部門、特に総務部長は「普段から全社視点で問題発見能力を磨く」ことと「多種多様なフレームワークの特長を知っておく」ことが必要です。(という考えで実践してきたので、新たにフレームワークが入ると、どんなものか?を調べる癖が身に付いてしまった。という事です)

私ならどんなOKRを作るか?

最後に、私の経験からOKRを作ってみようと思います。
もちろん、いいとこ取りですから、OKRのお作法に全て準拠しているわけではありません。

以前、ある会社で総務部長を勤めていたのですが、私のキャラもあって、「単なる総務じゃなくて、自分たちもビジネスやってみようぜ!」なんてことを始めたことがあります。その時やったことをOKR風にアレンジしてみます。

O:総務関連のプロ集団になり、総務分野のビジネスを興す
KR:
①簿記2級以上全員取得
②社内クレーム0件
③自分の仕事の中でビジネスのネタになりそうなものを、各人が1件提案する

実際には、「O」は、「総務関連のプロ集団を目指す」「総務分野のビジネスを興す」の二つでしたが、まぁここは仮定の話なので、OKRのお作法のしたがって一つにします。

OKRでは、「Oは従業員が毎朝、わくわくしながらベッドを飛び出すものにしよう」なのですが、この時は確かに私はワクワクしてて、毎日が楽しかったと記憶しています。(従業員は迷惑だったかもしれませんが。。。)
なので正解に近いのでは?と思っています。

次にKRですが、個別に説明すると、

  1. 簿記2級以上全員取得
    「プロ集団になる」そして「自分たちのノウハウを外に売ろう」と考えているわけですから、日々の勉強は必須と考えました。資格の種類は何でも良かったのです。各人が勉強をする習慣を身に付けて欲しいという狙いです。結果は、全員合格しています。
  2. 社内クレーム0件
    給与計算や各種手続にミスはつきものです。でも「外に売ろう」と考えたとき、そのようなミスは極力減らすべきでしょう。社内での満足度が低いレベルで外販なんてお呼びじゃないです。
    ミスを防止する仕掛けの考案まで含めて、我々がプロとして商売をする必要条件と考えてました。
    こう意味付けすると、不思議なもので、各人が、スキルアップとともに、ミスを無くす仕組みを考え実践するようになり、ほぼミス0は達成できました。
  3. 自分の仕事の中でビジネスのネタになりそうなものを、各人が1件提案する
    実際には私の中だけの指標であり、明示していません。ここは仮定の話なので、KR3つという意味で追加しました。
    本来、皆がこれを考えたら凄いことになっただろうな。と思います。

もちろん、当時はOKRなんて無かったので、月曜日の「チェックインミーティング」も金曜日のウィン・セッションも行っていません。
しかし、誰から資格に合格すれば皆でお祝いしてたし、日々の仕事の中で「これもっと上手くできない?」なんて会話をよくしていたことを記憶しています。

そう考えると、割と自然にOKR的なことしていたように思います。
そして、意外とアメリカっぽいノリでやっていたようにも。。。

ということで、一応サンプルみたいに書きました。皆さんの参考になれば幸いです。

あと、こちらに当時の話を掲載しているので、良かったら見てください。

社内の改善エピソード
大嫌いなチェック作業をやらない
ツープラトン戦法2(詳細と顛末)

総務主導のビジネスのエピソード
仕事の中のアイデアをビジネスに
それが運送コストの最適化?

会社は商店じゃない。
組織を作り「会社」を作ること 採用はそのスタート地点

「求人しても集まらない。面接に来たけど全然マッチしない。入社したけど1ヶ月で退職してしまった。」こんなことの繰り返しで、ずっと]採用活動を続けている。そんなことありませんか?

「曖昧な定義で“戦力”になりそうな人を探す」より「“戦力”を定義し」、「組織を作り」、その上で「自社にマッチした考えの人を採用し」、「育て」、「戦力にする」と視点を変えてみましょう。

これすなわち経営。採用活動こそが最初に経営の力が試される場なのです。